記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

数学のpdfを書いています

書きながら公開している数学のpdfをブログでも見れるようにしようと思います。

微分ガロア理論入門
微分ガロア理論をほとんど前提知識を仮定せず解説しています。
drive.google.com

微分ガロア群を定義したところまで進んでいます。次は線形代数群の性質を使って、微分ガロア群の性質を考えていきます。

・フィルターと一様構造
『位相のこころ』や『森毅を主題とする変奏曲』に書いていることを理解するために、自分なりにまとめたメモです。一通り理解できたと自分なりに満足したところで、他の人にも読めるように書き直しをしようと思っています。
filter.pdf - Google ドライブ

新入生に勧める数学書2018

ツイッターで大学新入生にオススメの数学書を、ハッシュタグ #新入生に勧める数学書2018 で募集しました。


皆さんのオススメの本を抜粋して紹介します。

参加してくださった皆様、ありがとうございました。
(ツイートの掲載は許可をとっています。了承していただいた皆さん、ありがとうございました。)

はじめに

こんな企画を始めたものの、知らない人が勧める本にすぐに飛びつくのではなく、著名な数学者が勧める本をまずは本屋で見て欲しいと思います。
それを知るには、ちょうど、毎年この時期に出る『数学ガイダンス2018』がオススメです。
数学者が勧める本の紹介や、数学の各分野の紹介、大学での勉強法などがまとめられています。
(とは言え、ツイッターで紹介してくださった多くの本は、この本でも紹介されています。)

あと、個人的な意見を少し。
大学で使う教科書には、4年やそれ以上の長い期間使い続けることができるものがあります。
いわゆる名著と呼ばれる本や大学で勧められる本はそういうものが多いです。
最初は、自分で理解できるように平易に書かれた簡単な本を買いがちですが、そういう本は半年もすれば必要なくなることも多いです。
なので、是非とも長年読み続けられてきた名著を、最初は理解できなくても、買っておいて折にふれてチャレンジして欲しいです。
これは難しい本を読めと言っているのではないです。
また、もちろん自分で理解できる本から始めることも大事ですし推奨しますが、分かりやすさという基準では捕らえられない数学書の価値も知って欲しいところです。

あと、大学の図書館を有効活用して欲しいですね。
本を買うときは、本屋や図書館でちゃんと自分で見てからにしましょう。

一般

高校数学と大学数学ではギャップを感じることが多いと思います。そのギャップを埋めてくれる本や、数学の面白さを伝える本を見ていきましょう。
数学ガール シーリズ


数学ガールで数学が好きになった人は多いようです。大学生でも読んだことがなければ是非とも読んで欲しいです。
たくさん本が出ていて何を買えばいいのか分からない場合は、以下のページを参考にしてください。

オイラーの贈り物

志学数学


この本は、本当にオススメです。
大学生に限らず、数学者や研究者に憧れている人や数学に興味がある人は是非とも読んでみてください。

数学の大統一に挑む


数学の最先端を知ることができる本はなかなかありません。
いろんな概念を出来るだけ易しく解説しているので、すべて読み通すのは難しいかもしれませんが、是非とも手にとって読んで欲しい本です。

微積

微積分は名著と呼ばれる和書が多いです。
以下の高木、小平、杉浦の三冊のうち気に入ったものを買っておいて損はしないと思います。

解析概論


「取り敢えず、高木貞治さんの解析概論を読んでおけば微積の授業で困る事は無くなるはずです!」
という意見もありました。
著者の高木貞治は近代日本数学の父とも呼ばれています。
昔から長年読まれ続けてきた本であり、一番有名な数学書だと思います。
実はそれほど難しいわけでもないですが、新しい本に比べると書き方の面で読みづらいかもしれません。

解析入門I II (杉浦光夫)



私が勉強したのもこの本でした。
難しいところがたくさんありますが、普通の本には書いていないけど大事なことがたくさん書いてあります。
数学の力をつけたい人や、授業では分からなかったことを調べるのにもオススメです。

解析入門I II小平邦彦


小平先生はフィールズ賞をとった数学者です。
丁寧に書かれていて、分かりやすさも重視されている本です。

上の三冊が有名ですが、難しい場合には以下の本を紹介している方がいました。
解析入門 (ラング)



この本自体は、私はちゃんと読んだことがありませんが、ラング先生はたくさんの本を書かれていて、私は"Algebra"をよく読みます。
数学を続けていけば、この本ではなくてもラング先生の本を読むことになるのではないでしょうか。

他にもたくさんの本が紹介されていました。
解析入門1-6 (松坂和夫)

微分積分(黒田成俊)

対話 微分積分学(笠原晧司)


解析学入門(福井常孝/上村外茂男/入江昭二/宮寺功/前原昭二/境正一郎)

解析入門 (田島一郎)

イプシロン-デルタ (田島一郎)



私は読んだことがないのですが、この本は有名ですね。
イプシロンデルタ論法は最近授業で扱われないことも多いそうですが、早いうちに理解できると楽しいです。
(はじめは難しく感じるかもしれませんが、実は難しくないので、数学を勉強しているうちに絶対に理解できます。分からなくても落ち込む必要ないと思います。)

線形代数

線形代数は本当にたくさんの本があります。
基本的には授業で紹介される本を使うと良いと思いますが、それでは分からないと思った時には、評判のいい本や自分の気に入った本を使うと良いでしょう。
線形代数入門(斎藤正彦)



線形代数(佐武一郎)



線形代数(長谷川浩司

線形代数(三宅敏恒)

副読本的な本も紹介しておきます。
はじめてのリー群
はじめてのリー環


線形代数は本当にいろんな分野で役に立ちます。
リー群やリー環はその典型例で、これ自体が非常に大切な概念です。
これらの本は線形代数を復習しながら、その使い方も分かるように書かれています。

2次行列のすべて


今の高校生は高校で行列を学びませんが、この本は高校の行列で教えられていたことに加えて、大学の線形代数で勉強することを2次行列に限定して一通り勉強できるようになっています。

代数学(整数)

代数学は大学に入ったばかりでは授業がないですが、興味がある人が多いと思います。整数の本もここで紹介しておきます。

数論への招待

初等整数論講義

代数学(雪江 明彦)

みんな大好きガロアの本も紹介されていました。

ガロアと方程式

代数と数論の基礎
代数方程式とガロア理論


幾何

大学に入ったばかりでは幾何の授業があまりないため、それほど幾何の本は紹介されていませんでした。
しかし、小林昭七先生の以下の本を紹介する人は多かったです。

曲線と曲面の微分幾何


この本は具体例が豊富で非常に分かりやすいです。
抽象的な幾何でつまずいている人や幾何に興味がある人はこの本でトレーニングするといいと思います。

微分形式の幾何学


この本は私からもオススメします。
最初、幾何で困ったらこの本を読んでいました、この本以上に頼れる本はないです。
入学したばかりではピンとこないかも知れませんが、頭の片隅に置いておいて欲しいです。

集合と位相

数学科で勉強する集合や位相といった分野は、高校とのギャップが最も大きい分野だと思います。

集合・位相入門


位相と言えば真っ先にあがる本です。
私もこれで勉強しました。
分かりやすく書いているわけではないですが、丁寧に書かれていて、ゆっくり読めばちゃんと分かるようになっています。

集合と位相



この本は分かりやすいとすごく評判の本ですね。
誰にも勧められる本はこれだと思います。

トポロジー入門


この本も非常に分かりやすいと評判です。
授業や他の本で挫折した時には是非この本を手にとって欲しいです。

みなさんのアドバイス

本に限らずアドバイスを書いてくださった方もたくさんいましたので、まとめておきます。


その他

上で紹介した枠組みには入らないような本やちょっと変わった本の紹介もありました。いい本ばかりなのでまとめておきます。
最近、妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。


カクヨムで連載中の小説の書籍化です。
少しふざけた本のように見えるかもしれませんが、数学の本として本当にいい本だと思います。(私も持っています。)
連載記事は以下で無料で見ることもできます。書籍版は書き下ろしの短編が入っています。
kakuyomu.jp

本質から理解する数学的手法


この本は知らなかったですが、目次を見たところ、まさに新入生にぴったりの本ですね。

数学文章作法 基礎編


数学ガールの著者による数学の文章の書き方の本です。
この本も非常にいいです。

30講シリーズ


このシリーズを読んで理解できたと言っている人を普段もよく見ます。
授業が分からなくなった時には、このシリーズの本を読むことをお勧めします。

マセマシリーズ


問題を解きながら重要な概念を理解していくことができます。
ちゃんとした教科書を買った上でこの本で訓練するといいと思います。

数理解析学概論


大学の数学で勉強する様々な分野がこれ一冊で勉強できます。
とは言え、この本の最大の特徴は解析学の説明です。
解析学微分方程式への応用は大学の数学でもなかなかたどり着けないのですが、現代数学で非常に重要な部分を占めています。
それを知るには最適な本だと思います。

数理論理学


この本は僕が数学を好きになったきっかけの本でもあってオススメしたいところです。
完全性定理や不完全性定理などは聞いたことがあるかもしれませんが、そのようなことも書いています。

非線形ダイナミクスとカオス


力学系の本の中で最も易しく書かれている本だと思います。
力学系自体も面白いですし、解析がどのように応用されるかを知っておくと、発展的な内容を勉強するモチベーションにもなると思います。

Lawvereの書籍


圏論を知っていると、いろんな分野のつながりが良くわかるようになります。
例をあまり知っていない状態で圏論だけを勉強してもなかなか分かるようにはなりませんが、他の数学と一緒に少しずつ勉強していくと良いと思います。
最近は入門書やネットで読める易しい解説も多く、勉強しやすいと思います。

カラー図解 数学事典


これも新入生にオススメの本です。
少し高価なので、合格祝いに買ってもらいましょう。

LaTeX2ε 美文書作成入門


LaTeXを使えば、数式が綺麗に書けます。
理系ならいつかこの本を買うことになると思います。

数学女子


数学科の雰囲気が分かる漫画です。

q類似とテイラー展開(可積分系入門)

今回は q類似を導入して,多項式テイラー展開 q類似を解説します.

(一応,以下の記事の続きですが,この記事だけで独立して読むことができます.)
tetobourbaki.hatenablog.com

q類似とは

 q 1以外の実数としておきます. q 類似とは何らかの数学的対象の類似物です.例えば,「XはYの  q類似である」というのは,「Xは qを含む式であり,q1に近づけるとXはYになる」ことを意味します。Yにパラメータ qを入れて, q = 1のときがYで,Yを q \neq 1以外のときにも一般化したものだと思ってもいいでしょう。

例として,導関数 q類似を考えましょう.まず, f導関数
\displaystyle
\qquad f'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h} =  \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{(x+h) - x}
と定義されました.そこで, q類似を
\displaystyle
\qquad D_q f(x) =  \frac{f(qx) - f(x)}{(q-1)x} = \frac{f(qx) - f(x)}{qx - x}
と定義します. D_q f(x) f(x) q導関数と言います. f(x)微分可能なとき,
 \displaystyle
f'(x) = \lim_{q \to 1} D_q f(x)
が成り立つことが分かります.言い忘れていましたが,一つのものの q類似を何通りも考えることができますが,面白いのはだいたい一つになるようです.

以下の公式は簡単に示すことができます.

 q導関数の公式
 f, gを関数とする.以下が成り立つ.
 \displaystyle
\qquad D_q (f(x) + g(x) ) =  D_q f(x) + D_q g(x)
 \displaystyle
\qquad D_q (f(x)g(x) ) = f(x) D_q g(x) +  D_q f(x) g(qx)
ライプニッツ則に対応するものが微妙に非対称ですが, q 1に近づけると普通のライプニッツ則になるのでこれ自体もライプニッツ則の  q類似になっています.

 q導関数の分母と分子に注目すると,新たに記号を用意すると良いことが分かります. f q差分
 \displaystyle
\qquad d_q f (x) = f(qx) - f(x)
と定義します.すると
 \displaystyle
\qquad D_q f(x) = \frac{d_q f (x)}{d_q x}
と書くことができます.

様々なq類似

さて,今回の目標はテイラー展開です.テイラー展開
 \displaystyle
\qquad f(x) = \sum_{n=0}^{\infty} f^{(n)} (a)\frac{(x-a)^n}{n!}
 q類似を考えましょう.そのためにはテイラー展開に現れるものの  q類似を考えることが必要です. q導関数はすでに考えたので,階乗  n! q類似が必要です.これだけでも不十分で, (x-a)^n q類似も考えないといけないということが分かります.

まず階乗を考えます.しかしそのためには整数  n q類似を考える必要があります. そのヒントとして, (x^n)' = n x^{n-1}q類似ではどうなるかを見てみます.
 \displaystyle 
\qquad D_q x^n = \frac{(qx)^n - x^n}{(q -1) x} = \frac{q^n - 1}{q - 1} x^{n-1}
この式を参考にして,整数  n q類似を
 \displaystyle
\qquad [n]_q = \frac{q^n - 1}{q - 1} = q^{n-1} + q^{n-2} + \dots + q + 1
と定義します. \lim_{q \to 1} [n ]_q = n となるのでこれでいいでしょう.これを使えば,階乗の  q類似は
 \displaystyle
\qquad [ n ]_q ! = 
\left\{ 
\begin{matrix}
1 & \text{if} &n = 0 \\
[n ]_q \times [n-1 ]_q \times \dots [1 ]_q & \text{if}& n = 1,2, \dots
\end{matrix}
\right.
と定めることができます.

さて,次は  (x-a)^nについて考えましょう.このままでも良さそうな気がするので,どうしてこれの  q類似まで考える必要があるのかを説明します.まず, D_q x^n = [n ]_q x^{n-1} が成り立つのでした.(そうなるように整数の  q類似を定義した.)なので, D_q (x-a)^n = [n ]_q (x-a)^{n-1} が成り立つことを期待するのですが,一般には成り立ちません.成り立たないことを,具体例 (x-1)^2で見ましょう.
 \displaystyle
\qquad D_q (x - 1)^2 - [2]_q (x-1) =  D_q (x^2 - 2x - 1) - [2]_q (x-1) \\
\qquad \qquad \qquad \qquad \qquad \quad = D_q x^2 - 2 D_q x - [2]_q x+ [2 ]_q \\
\qquad \qquad \qquad \qquad \qquad \quad = [2 ]_q x - 2 [1]_q - [2]_q x+ [2 ]_q \\
\qquad \qquad \qquad \qquad \qquad \quad =  - 2 + \frac{q^2 - 1}{q - 1} \\
\qquad \qquad \qquad \qquad \qquad \quad =  q -1 \\ 
\qquad \qquad \qquad \qquad \qquad \quad \neq 0
このようになってしまいます.そこで,天下り的ですが, (x-a)^n q類似を
 \displaystyle
\qquad (x-a)^n_q = 
\left\{ 
\begin{matrix}
1 & \text{if} &n = 0 \\
(x-a) \times (x-qa) \times \dots (x-q^{n-1}a) & \text{if}& n = 1,2, \dots
\end{matrix}
\right.
と定義しましょう.このとき,以下が成り立ちます.

命題
 n \geq 1に対して,
 \displaystyle
\qquad D_q (x-a)_q^n = [ n]_q (x - a )_q^{n-1}
証明.数学的帰納法で示す. n = 1で成り立つのは明らか.
 n = kで成り立つと仮定する. (x - a)_q^{k+1} = (x-a)_q^{k}  (x - q^ka)  q微分すると,ライプニッツ則により,
 \displaystyle
\qquad D_q (x - a)_q^{k+1} = (x-a)_q^{k}  D_q (x - q^ka) + D_q (q-a)_q^{k}  (qx - q^k a) \\
\qquad \qquad \qquad \quad  = (x-a)_q^{k} +  [ k]_q (x - a )_q^{k-1} q(x - q^{k-1} a) \\
\qquad \qquad \qquad \quad   =  (x-a)_q^{k} +  q[ k]_q (x - a )_q^{k}\\
\qquad \qquad \qquad \quad   = (1 +  q[ k]_q) (x - a )_q^{k}\\
\qquad \qquad \qquad \quad   = (x - a )_q^{k+1}\\
よって証明が終わった. \square

多項式テイラー展開

さて,テイラー展開 q類似を証明しよう.証明するには以下の重要な定理を示せばよい.(これは普通の多項式テイラー展開の証明にも使える.)

定理
 a複素数 D多項式の線形写像とする.
また,多項式の列  \{P_0 (x), P_1 (x) , P_2 (x), \dots, \}は以下を満たすとする:
(a)  P_0 (x) = 1かつ  P_k (a) = 0 ( k \geq 1)
(b)  \mathrm{deg} P_k = k
(c)  DP_k (x) = P_{k-1} (x) ( k \geq 1) かつ  D(1) = 0
このとき,任意の N多項式  f(x)に対して,以下のテイラー展開の公式が成り立つ:
 \displaystyle
\quad f(x) = \sum_{n=0}^N (D^n f) (a) P_n (x)
証明. V N次以下の多項式がなすベクトル空間とすると,次元は  N+1である.仮定(b)により, \{P_1 (x), \dots, P_N (x) \}は基底を成す.そこで, f(x)
 \displaystyle
\quad f(x) = \sum_{k=0}^N c_k P_k (x)
と書けたとする. x = aとおくと,仮定(a)により c_0 = aとなる. f D n回作用させると,仮定(b)と(c)により,
 \displaystyle
\quad (D^n f) (x) = \sum_{k=n}^N c_k D^n P_k (x) = c_k P_{k-n} (x)
この式に  x = aを代入すると(a)により,

c_n = (D^n f)(a)
を得る.よって定理が証明された. \square

よって,準備が終わった. P_k
 \displaystyle
\quad P_k (x) = \frac{(x- a)_q^k}{ [k ]_q }
とおくと,定理の仮定を満たすことが簡単に分かる.よって,以下を得る.

定理(多項式 qテイラー展開
任意の N多項式  f(x)複素数  a に対して,以下が成り立つ.
 \displaystyle
\quad f(x) = \sum_{n=0}^N (D_q^n f) (a)  \frac{(x- a)_q^n}{ [n ]_q }

まとめ

 q 類似を導入しました.普段見ている様々な公式が  q類似でも成り立つということは,普段見ている世界が  q = 1の場合にすぎないと言うこともできます.次回は,前回考えた整数の分割と q類似が関係しているということを見ていきます.

参考文献
P. Cheng, V. Kac, "Quantum Calculus", Springer

整数の分割とヤング図形(可積分系入門)

この記事の続きですが,本記事だけで楽しめます.
tetobourbaki.hatenablog.com
当分は可積分理論に現れる基本的な手法を見ていきます.

組み合わせ問題

組み合わせ問題は一般に解くことが難しいです.組み合わせ問題の面白さというのは、全ての組み合わせを数えれば原理的には答えを求めることができるものの,それは計算機を使ってすら難しいところでしょう.

以下の動画を見れば,簡単そうな問題でも数え上げると大変なことになることが分かります.

次の動画では,簡単に計算するソフトを紹介しています.数学の力を使えばこんなことが可能になるのですね.

今回はこの問題ではなく、整数の分割を取り上げます。

整数の分割

整数の分割とは,与えられた自然数自然数の和で書くことです.
例えば,3
 \displaystyle
3 = 1+1+1\\
3 = 2+1\\
3 = 3
 3通りの分割法があります.

もう少し正確に定義しましょう.和の順番を変えても同じ分割だと考えることにするので,和を書くときは大きい数字の順に並べることにしましょう.すると以下のように定義ができます.

定義
自然数  N分割とは自然数の列  a_1 \geq a_2 \geq \dots \geq a_nを用いて書ける
 \displaystyle
N = a_1 + a_2 +  \dots + a_n
のことを言う.このときの  a_i和因子という.

4 の分割を並べてみると,
 
4 = 1 + 1 + 1 + 1\\
4 = 2 + 1 + 1 \\
4 = 2 + 2 \\
4 = 3 + 1\\
4 = 4
 5通りがある.
 5の分割を並べてみると,

5 = 1 + 1 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 2 + 1 \\
5 = 3 + 1 + 1\\
5 = 3 + 2\\
5 = 4 + 1\\
5 = 5
7通りがある.
分割の数を分割数という. Nの分割数を  p(N)と書く.
ここまでの例では分割数はそれほど大きくならないようにも見える.しかし,分割数は爆発的に大きくなる.
 p(6) = 11であるが,分割数が 100を越えるのは N = 13の時で p(13) = 101である. 100の分割数は  p(100) = 190,569,292でありずいぶん大きい. 1000の分割数になるととてつもなく大きくて, 31桁の自然数となる.

分割数が面白くなるのは、単に全ての分割を考えるのではなく、分割に条件をつけた場合の分割数である.(ラマヌジャンはこの分野でたくさん業績があるらしい.)例えば,全ての和因子が  2以上という条件をつけると,上に列挙したものをみれば, 5の分割数は 2となり非常に小さくなることが分かる.この方向で面白く深い問題を考えるのは次回以降の記事に回すことにして,次にヤング図形という便利な道具を導入しよう.

ヤング図形

ヤング図形とは以下のような箱の集まりでできる図形のことである.2つ例を挙げる.
 \qquad f:id:tetobourbaki:20180220223648p:plain

 \qquad f:id:tetobourbaki:20180220223651p:plain
適当に箱を並べたのではなくルールがある. i行目に並べた箱の個数を  b_iと表すことにすると, b_1 \geq b_2 \geq \dots b_nが成り立つ必要がある.つまり下の行は上の行より多くの箱を並べてはダメだということである.最初の例では,

b_1 = 3, \quad b_2 = 1, \quad b_3 = 1, \quad b_4 = 1
であり, 2番目の例では

b_1 = 4, \quad b_2 = 2, \quad b_3 = 1
となっている.ヤング図形のルールを見れば分かるように,ヤング図形は整数の分割を表している.最初の例は  6の分割  3 + 1 + 1 + 1を表しており, 2番目の例は 7の分割 4 + 3 + 1を表している.数の分割とヤング図形は一対一に対応していることが分かる.

ヤング図形を線対称にひっくり返したものを共役という.(線は左上から右下への斜めの線にとる.)
言葉では分かりにくいので,例で説明する.上で挙げた最初の例とその共役を並べると
 \qquad f:id:tetobourbaki:20180220223648p:plain  \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225159p:plain \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225008p:plain
である. 2番目の例とその共役を並べると,
\qquad f:id:tetobourbaki:20180220223651p:plain  \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225159p:plain  \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225515p:plain
である.ヤング図形の共役はやはりヤング図形になっていることが分かる.つまり,分割をヤング図形と考えて,その共役を取ることで新しい共役を得ることができる.この操作はヤング図形を使わなくても定義できるものの,ヤング図形を使うとイメージが湧く.

応用

行の個数が  m個以下のヤング図形を考えよう.これは和因子の個数が  m個以下になる分割を考えていることになる.一方,その共役をとると,「行の個数が  m個以下」のヤング図形の共役は「それぞれの行の箱の数が  m個以下」のヤング図形になる.これは全ての和因子が m以下の分割に対応する.このことを踏まえると以下の定理が成り立つ.

定理
自然数  Nに対して,和因子の個数が  m個以下になる  Nの分割数と,全ての和因子が m以下の  Nの分割数は等しい.
このことを  N = 5, m = 3で確認しよう.
和因子の個数が  3個以下になる  5の分割は

5 = 2 + 2 + 1 \\
5 = 3 + 1 + 1\\
5 = 3 + 2\\
5 = 4 + 1\\
5 = 5
 5個である.一方,全ての和因子が 3以下の  Nの分割

5 = 1 + 1 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 2 + 1 \\
5 = 3 + 1 + 1\\
5 = 3 + 2\\
 5個であり,確かに定理が成り立つ.

共役を使えば色々定理が作れそうである.

まとめ

今回は整数の分割を通して,ヤング図形を導入しました.ヤング図形は可積分理論の様々な場面で現れますが,それは整数の分割を表すと覚えておくと,損はないでしょう.

次回はq類似とかqアナローグとか呼ばれるものを導入します.これも可積分理論でよく使われるものですが,整数の分割とも関係の深い分野です.

続き
tetobourbaki.hatenablog.com

可積分理論入門(イントロダクション)

「可積分理論入門」というタイトルではありますが,自分で勉強しつつ,勉強したことをまとめておこうというのが,この記事のモチベーションです.それでは,始まり始まり.

可積分系とは何か

おそらく,可積分は定義がはっきりとは決まっていないと思います.古典的にはLiouville可積分という概念があり,これにははっきりとした定義があります.Liouville可積分とは簡単に言えば,十分な個数の保存量があることです.可積分と呼ばれるものには,Liouville可積分のように多くの保存量を持つものもありますが,そのことが可積分とみなされる十分条件ではなさそうですし,ハミルトン系でないものや微分方程式でないものもあるので,厳密に定義するのは原理的に難しそうです.

私は可積分系の専門化ではないですが,そのぶん気楽に語ることができるので,このブログでは以下のものを可積分系と捉えることにします.
「(一般には解けない問題のクラスの中で,)解の何らかの構造が記述できるもの」
この定義は一般に考えられている可積分系より少し広い定義になっていると思います.面白いのは,異なる可積分系同士で,構造を記述する方法が同じであることが頻繁にあるということです.方法のレベルで全然違う分野,例えば,微分方程式整数論などが関係したりするのです.
可積分系の構造を記述する方法」
の研究を「可積分理論」と呼ぶことにしましょう.

本ブログのこの連載では,構造を記述する様々な方法を少しずつ学びながら,具体的な可積分系が理解できることを目指します.微積分や線形代数を前提知識としますが,分からなくても雰囲気は伝わるように書いていこうと思います.

残りでは,可積分系の一つの例としてKdVを扱います.線形微分方程式は一般に解ける方程式なので,本記事の可積分の定義を満たしません.一方,非線形の方程式はほとんどの場合,解の構造が複雑すぎるので,やはり可積分ではありません.KdV方程式は非線形の方程式であるものの,解を得る面白い方法があります.

KdV方程式

積分な方程式の例としてKdV方程式を考えましょう.KdV方程式は
 \displaystyle
\qquad u_t + 6u u_x + u_{xxx} = 0
という式です.ここで,u_t u tによる偏微分 u_xxによる偏微分を表します.

この方程式は偏微分方程式なので,一般には解を求めることは難しいはずです.しかし,あるアルゴリズムによりソリトン解と呼ばれる解
\displaystyle
\qquad u(x, t) = 2 \lambda_0^2 \mathrm{sech}^2(\lambda_0 x - 4 \lambda_0^3 t)
を得ることができます.ここで  \lambda_0は任意の実数です.

以下では,このアルゴリズムについて少し詳しく説明します.少しだけややこしいので,それほど気にならない方は,KdV方程式が可積分なものの例であるということだけ覚えてもらって,まとめまで飛んでください.

Darboux変換

KdV方程式を解くときに用いられるDarboux変換をまず説明します.Darbouxは"ダルブー"と読みます.

シュレディンガー方程式*1と呼ばれる以下の方程式を考えます.
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} - u \phi = E \phi \qquad \text{(S)}
ここで, u xの関数でポテンシャルと呼ばれます. Eは実数でスペクトルと呼ばれます.つまり,関数  uと実数  Eが与えられたときの  \phiに対する方程式が(S)です.

ここで, u E = E_0に対して,解 \phi = fが求まったとしましょう.つまり,
 \displaystyle
\qquad -f_{xx} - u f = E_0 f \qquad \text{(S)}
が成り立っているとします.このとき,以下の変換をDarboux変換と言います.
 \displaystyle
\qquad \bar{u} = u + 2(\log f)_{xx}, \qquad \bar{\phi} = \phi_x - (\log f)_x \phi
 u, \phi, Eが(S)を満たすとき, \bar{u}, \bar{\phi}, E
 \displaystyle
\qquad -\bar{\phi}_{xx} - \bar{u} \bar{\phi} = E \bar{\phi}
を満たし,やはりシュレディンガー方程式を満たします.(証明は最後にある付録を参照せよ.)つまり,ポテンシャル  u,エネルギー  Eに対するシュレディンガー方程式の解  \phiは,別のポテンシャル  \bar{u}で同じエネルギー Eに対する方程式の解  \bar{u}に変換することができます.

KdV方程式とLax pair

シュレディンガー方程式 xに関する常微分方程式でしたが, t微分に関する方程式も加えた以下の連立偏微分方程式を考えます.
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} - u \phi = E \phi \qquad \text{(L1)}
 
\qquad \phi_{t} = - 4 \phi_{xxx} - 6u \phi_x - 3 u_x \phi \qquad \text{(L2)}
この形でもいいのですが,(L2)には xに関する3回微分が含まれているので,(L1)を用いて簡単にした
 
\qquad \phi_{t} = u_x \phi + (4 E - 2u) \phi_x \qquad \text{(L2)}
を考えてもいいです.( 式番号を(L2)以外に付け替えるべきですが,区別しなくても特に困らないので(L2)をどちらと捉えてもいいです.)

(L1)と(L2)の連立方程式を(L)で表すことにします.連立方程式が解を持つためには,両立条件と呼ばれる条件を満たす必要があります.方程式(L)の場合は

\qquad (\phi_{xx})_t = (\phi_t)_{xx}
が条件です.この条件を計算すると,なんと,
 \displaystyle
\qquad  u_t + 6u u_x + u_{xxx} = 0
と同値になります.(証明は最後にある付録を参照せよ.)つまり,(L)の両立条件はKdV方程式になるのです.

メモ
(L)は  u Eに対して定まる  \phiの方程式で,解を持つのは uがKdV方程式を満たすことと同値.

(L)をKdV方程式のLax pairという.

さて,(L)に関してもDarboux変換を考えましょう.つまり, u E = E_0に対して  \phi = fが(L)を満たしているとします.
 \displaystyle
\qquad -f_{xx} - u f = E_0 f
 
\qquad f_{t} = u_x f + (4 E_0 - 2u) f_x
この  fを用いて定義されるDarboux変換を
\displaystyle
\qquad \bar{u} = u + 2(\log f)_{xx}, \qquad \bar{\phi} = \phi_x - (\log f)_x \phi
とします.(上で導入したのと同じですが,f xだけでなく  tの関数となっていることに注意.)すると,当然 \bar{u}, \bar{\phi}, Eは(L1)
 \displaystyle
\qquad -\bar{\phi}_{xx} - \bar{u} \bar{\phi} = E \bar{\phi}
を満たしますが,さらに,(L2)
 
\qquad \bar{\phi}_{t} = \bar{u}_x \bar{\phi} + (4 E - 2\bar{u}) \bar{\phi}_x
も満たすことが計算により分かります.(これは少し大変なのでまだ確かめてません.)つまり,(L)にDarboux変換することで異なる \bar{u}, \bar{\phi}に関する方程式(L)が得られます.

以上を使うと非常に不思議なことが出来ます.
(L)を満たす  (u,\phi)があったとします.(このとき, uはKdV方程式の解になります.)これをDarboux変換すると,(L)を満たす  \bar{u}, \bar{\phi}が得られます.(L)が解 \phi を持つということは両立条件を満たすということなので,\bar{u}はKdV方程式の解になります.この  \bar{u}, \bar{\phi}に再びDarboux変換をすると新しい(L)が得られますが,これからさらに新たなKdV方程式の解が得られます.これを繰り返すことで,KdV方程式の解をいくらでも生成することが出来ます.

応用例

さて,元の問題に戻って,KdV方程式の解を求めてみましょう.まずKdV方程式は
\displaystyle
\qquad  u_t + 6u u_x + u_{xxx} = 0
でした.これは自明な解 u_0 = 0を持ちます.すると,この  u = u_0 = 0と適当な実数  E = E_0で定まる式(L)
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} = E_0 \phi \qquad \text{(L1)}
 
\qquad \phi_{t} = 4 E_0  \phi_x \qquad \text{(L2)}
は両立条件を満たすので,解を持ちます.便宜上  E_0は負の実数とし, \lambda_0^2 = -E_0を満たす  \lambda_0をとる.すると,
\displaystyle
\qquad C_1 e^{\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t} + C_2 e^{-(\lambda_0 x - 4 \lambda_0^3 t)}
が解になっています.特に, C_1 = C_2 = 1/2としたものを解  fとしてとります.
\displaystyle
\qquad  f = e^{\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t}/2 + e^{-(\lambda_0 x - 4 \lambda_0^3 t)}/2 = \mathrm{cosh} (\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t)
をとります.この  fを用いて  u_0をDarboux変換すると

\qquad u_1 = 0 + 2(log f)_{xx} = 2 \lambda_0 \{ \mathrm{tanh}(\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t) \}_x = 2\lambda_0^2 \mathrm{sech}^2 (\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t)
となります.これは両立条件つまりKdVを満たします.このようにKdV方程式の解が得られました.この解をソリトン解と言います.さらにDarboux変換を繰り返すとたくさんのKdV方程式を得ることが出来ます.

以下はソリトン解の  t = -5 \sim 5秒での動きをプロットした図です.緑,赤,青の順に  \lambda_0 = 1, 1.5, 2としています. \lambdaが大きいほど,波は大きく速度が速いことが分かります.
f:id:tetobourbaki:20180207105906g:plain

まとめ

今回は可積分系の例としてKdV方程式を取り上げました.KdV方程式は非線形な方程式にも関わらず,解を次々に生み出すアルゴリズムがありました.この仕組みはAKNS系と呼ばれる方程式が持つ特徴です.今後,AKNS系を取り上げることもあると思います.KdV方程式は他にも面白い構造が知られています.

この連載では,構造を記述する方法を説明していきます.数の分割,qアナローグ,Lie代数,対称性と作用素などを扱う予定です.

最後に,本稿を書く上で,

Gu et al., "Darboux Transformations in Integrable Systems Theory and their Applications to Geometry"

を参考にしました.AKNS系に興味を持った方はこの本を参考にしてください.AKNS系の微分ガロア群がDarboux変換でどのように変わるかを調べた最近の論文

Morales-ruiz et al, "Differential Galois theory and Darboux transformations for integrable systems"

も参考になるかもしれません.

続き
tetobourbaki.hatenablog.com




付録

命題
 u, \phi, E, f , E_0
 \displaystyle
\qquad - \phi_{xx} - u \phi = E \phi
 \displaystyle
 \qquad - f_{xx} - u f = E_0 f
を満たすとき,

\qquad \bar{u} = u + 2 (\log f )_{xx}, \quad \bar{\phi} = \phi_x - (\log f )_x \phi
で定まる  \bar{u}, \bar{\phi}

\qquad - \bar{\phi}_{xx} - \bar{u} \bar{\phi} = E \bar{\phi}
を満たす.
証明.
 \bar{\phi}_{xx} + \bar{u}\bar{\phi} + E\bar{\phi} = 0 を示す.一つずつ項を計算します.
\displaystyle
\qquad \bar{\phi}_x = \phi_{xx} - (\log f)_{xx} \phi - (\log f)_x \phi_x \\
\quad \qquad = - (u+E)\phi - (\log f)_{xx} \phi - (\log f)_x \phi_{x}
 \displaystyle
\qquad \bar{\phi}_{xx} = -u_x \phi - (u+E)\phi_{x} - (\log f)_{xxx} \phi -2 (\log f)_{xx} \phi_x - (\log f)_x \phi_{xx} \\
\quad \qquad = -u_x \phi - (u+E) \phi_x - (\log f)_{xxx} \phi - 2 (\log f)_{xx} \phi_x + (\log f)_x (u + E) \phi
 \displaystyle
\qquad \bar{u} \bar{\phi} =  u \phi_x + 2(\log f )_{xx} \phi_x - (\log f)_x u \phi - 2 (\log f)_{xx} (\log f)_x \phi
 \displaystyle
\qquad E \bar{\phi} = E \phi_x - (\log f)_x E \phi
なので,
 \displaystyle
\qquad \bar{\phi}_{xx} + \bar{u}\bar{\phi} + E\bar{\phi} = - u_x \phi - (\log f)_{xxx} \phi - 2 (\log f)_{xx} (\log f)_x \phi
ここで,
 \displaystyle
\qquad (\log f)_{xx} = \left( \frac{f_x}{f} \right)_x = \frac{f_{xx} f - f_x^2}{f^2} = -u -E_0 - \{ (\log f)_x \}^2
 \displaystyle
\qquad (\log f)_{xxx} = -u_x - 2 (\log f)_x (\log f)_{xx}
となるので,
 \displaystyle
\qquad \bar{\phi}_{xx} + \bar{u}\bar{\phi} + E\bar{\phi} = 0
が分かった. \square

命題
式(L)
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} - u \phi = E \phi \qquad \text{(L1)}
 
\qquad \phi_{t} = u_x \phi + (4 E - 2u) \phi_x \qquad \text{(L2)}
の両立条件は

\qquad u_t+ 6 u u_x + u_{xxx} = 0
である.
証明.
まず, (\phi_{xx})_tを計算する.
 \displaystyle
\qquad (\phi_{xx} )_t = (-u\phi - E \phi)_t \\
\qquad \qquad = -u_t \phi - (u+E) \phi_t \\
\qquad \qquad = -u_t \phi - (u + E) \phi_t \\
\qquad \qquad = -u_t \phi - (u + E) \{u_x \phi + (4E - 2u) \phi_x \} \\
\qquad \qquad =(-u_t - u u_x - Eu_x) \phi - (u+E) (4E - 2u) \phi_x
次に, (\phi_t)_{xx}を計算する.
 \displaystyle
\qquad (\phi_t)_x = u_{xx} \phi + u_x \phi_x - 2u_x \phi_x + (4E - 2u) \phi_{xx} \\
\qquad \qquad =u_{xx} \phi - u_x \phi_x - (4E-2u)(u+E) \phi\\
\qquad \qquad = \{ u_{xx} \phi - (4E-2u) (u+E) \phi \} - u_x \phi_x
 \displaystyle
\qquad (\phi_t)_{xx} = u_{xxx} \phi + u_{xx} \phi_{x} + (4u u_x - 2Eu_x) \phi - (4E-2u) (u+E) \phi_x - u_{xx} \phi_x - u_x \phi_{xx} \\
\qquad \qquad =u_{xxx} \phi + (4u u_x - 2Eu_x) \phi - (4E-2u) (u+E) \phi_x  +u_x (u+E) \phi \\
\qquad \qquad = \{ u_{xxx} + 5u u_x - Eu_x \} \phi - (4E - 2u) (u + E) \phi_x
となる.
よって,
 \displaystyle
\qquad (\phi_{xx})_t - (\phi_t)_{xx} = (u_{xxx} + 5 u u_x + u_t + u u_x) \phi  = (u_t + 6uu_x + u_{xxx} ) \phi
この式が任意の \phi 0になることは
 \displaystyle
\qquad u_t + 6uu_x + u_{xxx} = 0
と同値である. \square

*1:シュレディンガー方程式と呼ばれる式はいくつかあります.これは 1次元線形シュレディンガー方程式とも呼ばれます.

変換群と無限小変換(可積分系入門)

今回は変換群と無限小変換を説明します.
特に,微分の指数 \displaystyle e^{\frac{d}{dx}}が関数の平行移動であることを確認します.これはテイラー展開の意味付けにもなります.

今回の内容は岩波講座 応用数学ソリトンの数理』の1.1節の内容を下敷きにしていることをお断りしておきます.

(この記事は「可積分系入門」の4番目くらいの記事ですが,とりあえずこの記事を公開します.今回の内容と可積分系の関係はこの記事だけでは分からないと思います.この記事は独立に読んでも楽しめるはずです.)

群の公理と変換群


そもそも群の公理がどのように現れたのかを確認しましょう.集合 Xの要素を変換する写像  f\colon X \to Xを考えます.さらに,この写像を集めた集合  Gを考えます.ただし,全ての変換を  Gに入れるのではなく, Gが以下を満たすように写像を集めます.
 (i)  Gには Xの元を動かさない変換  e \in Gがある.つまり, eは全ての  a \in Xに対して  e (a) = aとなる写像である.
 (ii) 変換  f \in Gで動いた元を元どおりに戻す変換  f^{-1} \in Gが存在する.つまり, f^{-1}は全ての  a \in Xに対して  f^{-1} (f (a)) = f ( f^{-1} (a)) = aが成り立つ.
この性質を満たす変換の集合  G Xの変換群と呼ぶことにします.


これだけではあまり意味がありません. Xを忘れて  Gだけを考えていくことにします. Gには写像の合成で積の演算が定まります.つまり, f, g \in Gに対して f \circ g \in Gで演算を定めます.

性質
 (i)  e \in G は全ての  f \in Gに対して, f \circ e = e \circ f = fが成り立つ.
 (ii)  f \in G に対して定まる  f^{-1} \in G f^{-1} \circ f = f \circ f^{-1} = eを満たす.
 (iii)  f,g,h \in Gに対して, (f \circ g) \circ h = f \circ (g \circ h)が成り立つ.

最初の(i), (ii)は上で決めた  Gの性質からすぐに分かります.(iii)は一見要請していないように思えますが,実は変換を考えると自然に成り立つことです.確認しましょう.全ての  a \in Xに対して
 \displaystyle
\quad (f \circ g) \circ h (a) = (f \circ g) (h(a)) = f (g (h(a))) = f ( g \circ h (a)) = f \circ (g \circ h) (a)
が成り立ちます.よって,(iii)が成り立ちます.

逆に,一般に集合  G が与えられたとき,上の (i) - (iii) が成り立つ演算が成り立つものを群と呼びます.

定義
集合  G に対し,演算  a * b \in Gが定まり以下が成り立つものを群と呼ぶ:
 (i) ある元  e \in Gが存在して全ての  f \in Gに対して, f * e = e * f = fが成り立つ.
 (ii)  a \in G に対して,ある a^{-1} \in Gが存在して  a^{-1} * a = a * a^{-1} = eが成り立つ.
 (iii)  a,b,c \in Gに対して, (a * b) * c = a * (b * c)が成り立つ.

一般に考えた群は変換としての意味合いがなくなっていますが,それでも様々な性質が成り立ち重要な数学の対象になります.

変換の集まり(=変換群)をモチベーションとして群を定義しました.逆に,一般の群が与えられたときにこれを変換の集まりと思えるかという問題を考えましょう.ここで群の公理(iii)が意味を持ちます.変換群では必ず(iii)が成り立つので,群を変換の集まりと考えるためには絶対に群の公理(iii)を要請しなければいけないわけです.群を変換だと捉えたものを作用と言います.群自体には変換の意味がないので,少し要請が必要です.

定義
 G Xの作用を定めるとは,任意の  a \in Gに対し写像  a \colon X \to X が定まり以下を満たすことを言う.
 (i) 全ての  x \in Xに対して, e(x) = xが成り立つ
 (ii) 全ての a, b \in G x \in Xに対して,(a*b) (x) = a(b(x))が成り立つ.

 eは群の中では何も変化させないものだと分かっていますが,写像としてもそうあって欲しいので(i)を要請します.(ii)は少し分かりにくいと思います. a bに対して群の演算により新たに  a*bという写像が定まりますが,これは a, bを合成したものと同じであるというのが (ii)の意味です.つまり,群の演算と写像の合成が同じであるということを意味します.


以上をまとめます.変換の集合から変換群という群が定まりました.逆に,群が作用を定めていると,それは変換の集合だと思うことができます.変換の集合から定まる変換群は,その作用を考えると元の集合の変換に戻りますし,逆に,群の作用を考えて変換の集合だと考えてもそれから定義される変換群を考えれば元の群に戻ります.このように,群の公理は,変換の集合の概念と対応づくように代数を定義したものだと考えることができます.

1パラメータ変換群

 Xに作用する群の元がパラメータ付けされているものを考えましょう.実数  s \in \mathbb{R}に対して群の元  T(s) \in Gが定まるとします.実数は和により加群なので,この群の構造と  Gの群の構造に"良い関係"が成り立ってるとします.つまり以下を仮定します.
 \displaystyle
\quad T(0) = e,

\quad T(s+t) = T(s)T(t)
が成り立つとします.このような群を 1パラメータ群と呼びます(もっと厳密な定義が必要なところですが省略します).すると, e = T(s - s) = T(s)T(-s)が成り立つので, T(-s) = T(s)^{-1}が分かります.x \in Xを変換したものが  T(s)xです.実数は連続的に動かすことができるので, s \in \mathbb{R}を動かすと, T(s)xが滑らかに変わっていくのが 1パラメータ変換群のイメージです.

無限小変換

(この節は特に雑な議論をします.厳密にはLie群論の議論が必要です.)
空間 X(厳密には多様体)に作用する 1パラメータ群  Gを考えます. T(s)x微分すると,線形写像  Aを用いて
\displaystyle
\quad \frac{d}{ds}T(s) x = Ax
の用に書けたとします.これは線形の微分方程式なので簡単に解くことができて, T(s)x = e^{As}xとなることが分かります.ここで
 \displaystyle
\quad e^{As} = \sum_{n=0}^{\infty} A^{n} \frac{s^n}{n !}
です.よって, T(s) = e^{As}が分かります.式
\displaystyle
\quad \frac{d}{ds}T(s) x = Ax
1パラメータ変換  T(s)に対する無限小変換といい,Aを無限小変換の生成作用素といいます.以上のことから生成作用素  Aが分かれば,1パラメータ変換 T(s) e^{As}であることが分かります.以下では具体例を通して,この考え方の面白さを見ていきましょう.

回転

具体例を見ていきましょう.空間は2次元ベクトル空間  \mathrm{R}^21パラメータ群は回転
\displaystyle
\quad \theta \mapsto 
\left(
\begin{matrix}
\cos \theta & - \sin \theta \\
\sin \theta & \cos \theta
\end{matrix}
\right)
を考えます. \mathrm{R}^2への作用はもちろん
\displaystyle
\quad 
\left(
\begin{matrix}
x \\
y 
\end{matrix}
\right)
\mapsto
\left(
\begin{matrix}
x(\theta) \\
y(\theta) 
\end{matrix}
\right) =
\left(
\begin{matrix}
\cos \theta & - \sin \theta \\
\sin \theta & \cos \theta
\end{matrix}
\right)
\left(
\begin{matrix}
x \\
y 
\end{matrix}
\right)
です.微分をすれば,
\displaystyle
\quad \frac{d}{d \theta} 
\left(
\begin{matrix}
x(\theta) \\
y(\theta) 
\end{matrix}
\right) =
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right)
\left(
\begin{matrix}
x (\theta) \\
y (\theta)
\end{matrix}
\right)
なので,無限小変換は
 \displaystyle
A =
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right)
であることがわかります.実際,
 \displaystyle
\left(
\begin{matrix}
\cos \theta & - \sin \theta \\
\sin \theta & \cos \theta
\end{matrix}
\right)
= e^{
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right)
\theta
}
= 
\left(
\begin{matrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{matrix}
\right)+ 
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right) 
\theta + 
\left(
\begin{matrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{matrix}
\right) 
\frac{\theta^2}{2 ! } + \dots
が成り立つことが分かります.

関数の平行移動

最後に関数の平行移動について考えます.まず,空間の  (a,b)方向の平行移動が
\displaystyle
\quad 
\left(
\begin{matrix}
x  \\
y 
\end{matrix}
\right)
\mapsto
\left(
\begin{matrix}
x (s) \\
y (s)
\end{matrix}
\right)
 = 
\left(
\begin{matrix}
x + as \\
y + bs
\end{matrix}
\right)
と定まります.この変換を使えば,関数の変換
 \displaystyle
\quad f(x,y) \mapsto f(s) (x,y) = f(x(s),y(s)) = f(x+as, y + bs)
と定めることができます.これを微分して見ましょう.
 \displaystyle
\quad \frac{d}{d s} f (s) (x,y) =\frac{d}{ds} f(x+as, y + bs)\\

\qquad \qquad \quad = \frac{\partial f}{ \partial x} (x + as, y +bs) a + \frac{\partial f}{ \partial y} (x + as, y +bs) b  \\

\qquad \qquad \quad = a \frac{\partial }{ \partial x} f (x + as, y +bs) + b \frac{\partial }{ \partial y} f (x + as, y +bs)  \\

\qquad \qquad \quad = \left( a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} \right) f(s) (x , y)
よって,無限小変換が
 \displaystyle
 \quad A =  a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y}
であることが分かる.よって,この平行移動の  1パラメータ変換群は

\quad e^{ s\left( a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} \right)}
となることが分かります.これの意味が少し分かりずらいかもしれませんが,式
 \displaystyle
\quad f(x + as, y + b s) = f(s) (x,y) = e^{ s \left( a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} \right)} f(x,y)
を考えて見てください.特に, s = 1とした時の式,
 \displaystyle
\quad f(x + a, y + b ) = f(1) (x,y) = e^{ a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} } f(x,y)
の右辺を指数  e^{At}の定義にしたがって計算すれば,これは, f(x+a, y + b) (x,y)を中心にテイラー展開したものであることが分かります。

まとめ

 1パラメータ変換群とその無限小変換を定義しました。平行移動はこれ自体で重要な式なので,自分で計算して納得しておいてください.

微分係数と導関数の違い

高校生で微分係数導関数の違いが分からない人が多いと思います.
今回は微分係数導関数の違いについて解説したいと思います.
ただし,それほど厳密な議論はしないので,ご了承ください.

定義

まずは定義をおさらいしましょう.

定義(微分係数

関数  f(x) x = aにおける微分係数とは
\displaystyle
\quad f'(a) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}
のことである.

定義(導関数

関数  f(x)導関数とは
\displaystyle
\quad f'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h}
のことである.

ほとんど違いがないですね.
結論を言うと,微分係数は接線の傾きでありこれを求めたいのですが,この微分係数を求める関数が導関数です.どうして導関数を考える必要があるのかを理解するために,まずは微分係数を計算していきます.

微分係数の計算


まずは微分係数を実際に計算してみましょう.今回は  f(x) = x^2を考えましょう.


まずは  x=0での微分係数を計算してみましょう.
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(0+h) - f(0)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(0+h)^2-0^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} h \\
& = 0
\end{align}
となるので,微分係数 f'(0) = 0となります.


次に  x = 1 での微分係数を計算してみましょう.
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(1+h) - f(1)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(1+h)^2- 1^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{2 h + h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} (2+h) \\
& = 2
\end{align}
となるので,微分係数 f'(1) = 2となります.


最後に  x = 2 での微分係数を計算してみましょう.
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(2+h) - f(2)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(2+h)^2- 2^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{4 h + h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} (4+h) \\
& = 4
\end{align}
となるので,微分係数 f'(2) = 4となります.

微分係数から導関数

毎回,微分係数を計算するのは大変です.しかし,上の計算のほとんどが同じ計算なので,工夫できないかと考えてみます.
微分係数を求めるときには二つのステップがあります.
(1) どこで微分するか  x = aを決める.
(2) 極限  \displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}を計算する.
ここで, x = aを変えるたびに毎回極限を取るのが面倒だったので,先に極限をとってしまってから,あとで  x = aを決めることにしましょう.まず  xのまま微分をとると
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^2-x^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{2 x h+ h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} (2x+h) \\
& = 2x
\end{align}
となります.これが導関数  f'(x) = 2xです.これに, x = 0, 1, 2をそれぞれ代入すると,
 
\quad f'(0) = 0, \quad f'(1) = 2, \quad  f'(2) = 4
となり,上で求めた微分係数を一気に求めることができました.このように,導関数さえ求めてしまえば簡単に微分係数を求めることができます.

まとめ


 x = a での微分係数は, x = aにおける接線の傾きです.つまり微分係数実数です.一方,導関数 x = aを決めれば,そこでの微分係数を返す関数です.


導関数は公式として覚えておけばいいので,微分係数を計算するには導関数に求めたい場所 x=aを代入するだけで済みます.つまり,実際に極限の計算をするのは導関数を求めるときだけなのです.実際の計算で極限を計算する必要がないのはこのためです.


図でまとめると以下のようになるでしょう.ポイントは, x = aの代入と極限をとる操作の順番を変えることです.
f:id:tetobourbaki:20180115210526j:plain