記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

整数の分割とヤング図形(可積分系入門)

この記事の続きですが,本記事だけで楽しめます.
tetobourbaki.hatenablog.com
当分は可積分理論に現れる基本的な手法を見ていきます.

組み合わせ問題

組み合わせ問題は一般に解くことが難しいです.組み合わせ問題の面白さというのは、全ての組み合わせを数えれば原理的には答えを求めることができるものの,それは計算機を使ってすら難しいところでしょう.

以下の動画を見れば,簡単そうな問題でも数え上げると大変なことになることが分かります.

次の動画では,簡単に計算するソフトを紹介しています.数学の力を使えばこんなことが可能になるのですね.

今回はこの問題ではなく、整数の分割を取り上げます。

整数の分割

整数の分割とは,与えられた自然数自然数の和で書くことです.
例えば,3
 \displaystyle
3 = 1+1+1\\
3 = 2+1\\
3 = 3
 3通りの分割法があります.

もう少し正確に定義しましょう.和の順番を変えても同じ分割だと考えることにするので,和を書くときは大きい数字の順に並べることにしましょう.すると以下のように定義ができます.

定義
自然数  N分割とは自然数の列  a_1 \geq a_2 \geq \dots \geq a_nを用いて書ける
 \displaystyle
N = a_1 + a_2 +  \dots + a_n
のことを言う.このときの  a_i和因子という.

4 の分割を並べてみると,
 
4 = 1 + 1 + 1 + 1\\
4 = 2 + 1 + 1 \\
4 = 2 + 2 \\
4 = 3 + 1\\
4 = 4
 5通りがある.
 5の分割を並べてみると,

5 = 1 + 1 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 2 + 1 \\
5 = 3 + 1 + 1\\
5 = 3 + 2\\
5 = 4 + 1\\
5 = 5
7通りがある.
分割の数を分割数という. Nの分割数を  p(N)と書く.
ここまでの例では分割数はそれほど大きくならないようにも見える.しかし,分割数は爆発的に大きくなる.
 p(6) = 11であるが,分割数が 100を越えるのは N = 13の時で p(13) = 101である. 100の分割数は  p(100) = 190,569,292でありずいぶん大きい. 1000の分割数になるととてつもなく大きくて, 31桁の自然数となる.

分割数が面白くなるのは、単に全ての分割を考えるのではなく、分割に条件をつけた場合の分割数である.(ラマヌジャンはこの分野でたくさん業績があるらしい.)例えば,全ての和因子が  2以上という条件をつけると,上に列挙したものをみれば, 5の分割数は 2となり非常に小さくなることが分かる.この方向で面白く深い問題を考えるのは次回以降の記事に回すことにして,次にヤング図形という便利な道具を導入しよう.

ヤング図形

ヤング図形とは以下のような箱の集まりでできる図形のことである.2つ例を挙げる.
 \qquad f:id:tetobourbaki:20180220223648p:plain

 \qquad f:id:tetobourbaki:20180220223651p:plain
適当に箱を並べたのではなくルールがある. i行目に並べた箱の個数を  b_iと表すことにすると, b_1 \geq b_2 \geq \dots b_nが成り立つ必要がある.つまり下の行は上の行より多くの箱を並べてはダメだということである.最初の例では,

b_1 = 3, \quad b_2 = 1, \quad b_3 = 1, \quad b_4 = 1
であり, 2番目の例では

b_1 = 4, \quad b_2 = 2, \quad b_3 = 1
となっている.ヤング図形のルールを見れば分かるように,ヤング図形は整数の分割を表している.最初の例は  6の分割  3 + 1 + 1 + 1を表しており, 2番目の例は 7の分割 4 + 3 + 1を表している.数の分割とヤング図形は一対一に対応していることが分かる.

ヤング図形を線対称にひっくり返したものを共役という.(線は左上から右下への斜めの線にとる.)
言葉では分かりにくいので,例で説明する.上で挙げた最初の例とその共役を並べると
 \qquad f:id:tetobourbaki:20180220223648p:plain  \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225159p:plain \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225008p:plain
である. 2番目の例とその共役を並べると,
\qquad f:id:tetobourbaki:20180220223651p:plain  \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225159p:plain  \qquad f:id:tetobourbaki:20180220225515p:plain
である.ヤング図形の共役はやはりヤング図形になっていることが分かる.つまり,分割をヤング図形と考えて,その共役を取ることで新しい共役を得ることができる.この操作はヤング図形を使わなくても定義できるものの,ヤング図形を使うとイメージが湧く.

応用

行の個数が  m個以下のヤング図形を考えよう.これは和因子の個数が  m個以下になる分割を考えていることになる.一方,その共役をとると,「行の個数が  m個以下」のヤング図形の共役は「それぞれの行の箱の数が  m個以下」のヤング図形になる.これは全ての和因子が m以下の分割に対応する.このことを踏まえると以下の定理が成り立つ.

定理
自然数  Nに対して,和因子の個数が  m個以下になる  Nの分割数と,全ての和因子が m以下の  Nの分割数は等しい.
このことを  N = 5, m = 3で確認しよう.
和因子の個数が  3個以下になる  5の分割は

5 = 2 + 2 + 1 \\
5 = 3 + 1 + 1\\
5 = 3 + 2\\
5 = 4 + 1\\
5 = 5
 5個である.一方,全ての和因子が 3以下の  Nの分割

5 = 1 + 1 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 1 + 1 + 1\\
5 = 2 + 2 + 1 \\
5 = 3 + 1 + 1\\
5 = 3 + 2\\
 5個であり,確かに定理が成り立つ.

共役を使えば色々定理が作れそうである.

まとめ

今回は整数の分割を通して,ヤング図形を導入しました.ヤング図形は可積分理論の様々な場面で現れますが,それは整数の分割を表すと覚えておくと,損はないでしょう.

次回はq類似とかqアナローグとか呼ばれるものを導入します.これも可積分理論でよく使われるものですが,整数の分割とも関係の深い分野です.

可積分理論入門(イントロダクション)

「可積分理論入門」というタイトルではありますが,自分で勉強しつつ,勉強したことをまとめておこうというのが,この記事のモチベーションです.それでは,始まり始まり.

可積分系とは何か

おそらく,可積分は定義がはっきりとは決まっていないと思います.古典的にはLiouville可積分という概念があり,これにははっきりとした定義があります.Liouville可積分とは簡単に言えば,十分な個数の保存量があることです.可積分と呼ばれるものには,Liouville可積分のように多くの保存量を持つものもありますが,そのことが可積分とみなされる十分条件ではなさそうですし,ハミルトン系でないものや微分方程式でないものもあるので,厳密に定義するのは原理的に難しそうです.

私は可積分系の専門化ではないですが,そのぶん気楽に語ることができるので,このブログでは以下のものを可積分系と捉えることにします.
「(一般には解けない問題のクラスの中で,)解の何らかの構造が記述できるもの」
この定義は一般に考えられている可積分系より少し広い定義になっていると思います.面白いのは,異なる可積分系同士で,構造を記述する方法が同じであることが頻繁にあるということです.方法のレベルで全然違う分野,例えば,微分方程式整数論などが関係したりするのです.
可積分系の構造を記述する方法」
の研究を「可積分理論」と呼ぶことにしましょう.

本ブログのこの連載では,構造を記述する様々な方法を少しずつ学びながら,具体的な可積分系が理解できることを目指します.微積分や線形代数を前提知識としますが,分からなくても雰囲気は伝わるように書いていこうと思います.

残りでは,可積分系の一つの例としてKdVを扱います.線形微分方程式は一般に解ける方程式なので,本記事の可積分の定義を満たしません.一方,非線形の方程式はほとんどの場合,解の構造が複雑すぎるので,やはり可積分ではありません.KdV方程式は非線形の方程式であるものの,解を得る面白い方法があります.

KdV方程式

積分な方程式の例としてKdV方程式を考えましょう.KdV方程式は
 \displaystyle
\qquad u_t + 6u u_x + u_{xxx} = 0
という式です.ここで,u_t u tによる偏微分 u_xxによる偏微分を表します.

この方程式は偏微分方程式なので,一般には解を求めることは難しいはずです.しかし,あるアルゴリズムによりソリトン解と呼ばれる解
\displaystyle
\qquad u(x, t) = 2 \lambda_0^2 \mathrm{sech}^2(\lambda_0 x - 4 \lambda_0^3 t)
を得ることができます.ここで  \lambda_0は任意の実数です.

以下では,このアルゴリズムについて少し詳しく説明します.少しだけややこしいので,それほど気にならない方は,KdV方程式が可積分なものの例であるということだけ覚えてもらって,まとめまで飛んでください.

Darboux変換

KdV方程式を解くときに用いられるDarboux変換をまず説明します.Darbouxは"ダルブー"と読みます.

シュレディンガー方程式*1と呼ばれる以下の方程式を考えます.
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} - u \phi = E \phi \qquad \text{(S)}
ここで, u xの関数でポテンシャルと呼ばれます. Eは実数でスペクトルと呼ばれます.つまり,関数  uと実数  Eが与えられたときの  \phiに対する方程式が(S)です.

ここで, u E = E_0に対して,解 \phi = fが求まったとしましょう.つまり,
 \displaystyle
\qquad -f_{xx} - u f = E_0 f \qquad \text{(S)}
が成り立っているとします.このとき,以下の変換をDarboux変換と言います.
 \displaystyle
\qquad \bar{u} = u + 2(\log f)_{xx}, \qquad \bar{\phi} = \phi_x - (\log f)_x \phi
 u, \phi, Eが(S)を満たすとき, \bar{u}, \bar{\phi}, E
 \displaystyle
\qquad -\bar{\phi}_{xx} - \bar{u} \bar{\phi} = E \bar{\phi}
を満たし,やはりシュレディンガー方程式を満たします.(証明は最後にある付録を参照せよ.)つまり,ポテンシャル  u,エネルギー  Eに対するシュレディンガー方程式の解  \phiは,別のポテンシャル  \bar{u}で同じエネルギー Eに対する方程式の解  \bar{u}に変換することができます.

KdV方程式とLax pair

シュレディンガー方程式 xに関する常微分方程式でしたが, t微分に関する方程式も加えた以下の連立偏微分方程式を考えます.
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} - u \phi = E \phi \qquad \text{(L1)}
 
\qquad \phi_{t} = - 4 \phi_{xxx} - 6u \phi_x - 3 u_x \phi \qquad \text{(L2)}
この形でもいいのですが,(L2)には xに関する3回微分が含まれているので,(L1)を用いて簡単にした
 
\qquad \phi_{t} = u_x \phi + (4 E - 2u) \phi_x \qquad \text{(L2)}
を考えてもいいです.( 式番号を(L2)以外に付け替えるべきですが,区別しなくても特に困らないので(L2)をどちらと捉えてもいいです.)

(L1)と(L2)の連立方程式を(L)で表すことにします.連立方程式が解を持つためには,両立条件と呼ばれる条件を満たす必要があります.方程式(L)の場合は

\qquad (\phi_{xx})_t = (\phi_t)_{xx}
が条件です.この条件を計算すると,なんと,
 \displaystyle
\qquad  u_t + 6u u_x + u_{xxx} = 0
と同値になります.(証明は最後にある付録を参照せよ.)つまり,(L)の両立条件はKdV方程式になるのです.

メモ
(L)は  u Eに対して定まる  \phiの方程式で,解を持つのは uがKdV方程式を満たすことと同値.

(L)をKdV方程式のLax pairという.

さて,(L)に関してもDarboux変換を考えましょう.つまり, u E = E_0に対して  \phi = fが(L)を満たしているとします.
 \displaystyle
\qquad -f_{xx} - u f = E_0 f
 
\qquad f_{t} = u_x f + (4 E_0 - 2u) f_x
この  fを用いて定義されるDarboux変換を
\displaystyle
\qquad \bar{u} = u + 2(\log f)_{xx}, \qquad \bar{\phi} = \phi_x - (\log f)_x \phi
とします.(上で導入したのと同じですが,f xだけでなく  tの関数となっていることに注意.)すると,当然 \bar{u}, \bar{\phi}, Eは(L1)
 \displaystyle
\qquad -\bar{\phi}_{xx} - \bar{u} \bar{\phi} = E \bar{\phi}
を満たしますが,さらに,(L2)
 
\qquad \bar{\phi}_{t} = \bar{u}_x \bar{\phi} + (4 E - 2\bar{u}) \bar{\phi}_x
も満たすことが計算により分かります.(これは少し大変なのでまだ確かめてません.)つまり,(L)にDarboux変換することで異なる \bar{u}, \bar{\phi}に関する方程式(L)が得られます.

以上を使うと非常に不思議なことが出来ます.
(L)を満たす  (u,\phi)があったとします.(このとき, uはKdV方程式の解になります.)これをDarboux変換すると,(L)を満たす  \bar{u}, \bar{\phi}が得られます.(L)が解 \phi を持つということは両立条件を満たすということなので,\bar{u}はKdV方程式の解になります.この  \bar{u}, \bar{\phi}に再びDarboux変換をすると新しい(L)が得られますが,これからさらに新たなKdV方程式の解が得られます.これを繰り返すことで,KdV方程式の解をいくらでも生成することが出来ます.

応用例

さて,元の問題に戻って,KdV方程式の解を求めてみましょう.まずKdV方程式は
\displaystyle
\qquad  u_t + 6u u_x + u_{xxx} = 0
でした.これは自明な解 u_0 = 0を持ちます.すると,この  u = u_0 = 0と適当な実数  E = E_0で定まる式(L)
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} = E_0 \phi \qquad \text{(L1)}
 
\qquad \phi_{t} = 4 E_0  \phi_x \qquad \text{(L2)}
は両立条件を満たすので,解を持ちます.便宜上  E_0は負の実数とし, \lambda_0^2 = -E_0を満たす  \lambda_0をとる.すると,
\displaystyle
\qquad C_1 e^{\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t} + C_2 e^{-(\lambda_0 x - 4 \lambda_0^3 t)}
が解になっています.特に, C_1 = C_2 = 1/2としたものを解  fとしてとります.
\displaystyle
\qquad  f = e^{\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t}/2 + e^{-(\lambda_0 x - 4 \lambda_0^3 t)}/2 = \mathrm{cosh} (\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t)
をとります.この  fを用いて  u_0をDarboux変換すると

\qquad u_1 = 0 + 2(log f)_{xx} = 2 \lambda_0 \{ \mathrm{tanh}(\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t) \}_x = 2\lambda_0^2 \mathrm{sech}^2 (\lambda_0x - 4 \lambda_0^3 t)
となります.これは両立条件つまりKdVを満たします.このようにKdV方程式の解が得られました.この解をソリトン解と言います.さらにDarboux変換を繰り返すとたくさんのKdV方程式を得ることが出来ます.

以下はソリトン解の  t = -5 \sim 5秒での動きをプロットした図です.緑,赤,青の順に  \lambda_0 = 1, 1.5, 2としています. \lambdaが大きいほど,波は大きく速度が速いことが分かります.
f:id:tetobourbaki:20180207105906g:plain

まとめ

今回は可積分系の例としてKdV方程式を取り上げました.KdV方程式は非線形な方程式にも関わらず,解を次々に生み出すアルゴリズムがありました.この仕組みはAKNS系と呼ばれる方程式が持つ特徴です.今後,AKNS系を取り上げることもあると思います.KdV方程式は他にも面白い構造が知られています.

この連載では,構造を記述する方法を説明していきます.数の分割,qアナローグ,Lie代数,対称性と作用素などを扱う予定です.

最後に,本稿を書く上で,

Gu et al., "Darboux Transformations in Integrable Systems Theory and their Applications to Geometry"

を参考にしました.AKNS系に興味を持った方はこの本を参考にしてください.AKNS系の微分ガロア群がDarboux変換でどのように変わるかを調べた最近の論文

Morales-ruiz et al, "Differential Galois theory and Darboux transformations for integrable systems"

も参考になるかもしれません.

続き
tetobourbaki.hatenablog.com




付録

命題
 u, \phi, E, f , E_0
 \displaystyle
\qquad - \phi_{xx} - u \phi = E \phi
 \displaystyle
 \qquad - f_{xx} - u f = E_0 f
を満たすとき,

\qquad \bar{u} = u + 2 (\log f )_{xx}, \quad \bar{\phi} = \phi_x - (\log f )_x \phi
で定まる  \bar{u}, \bar{\phi}

\qquad - \bar{\phi}_{xx} - \bar{u} \bar{\phi} = E \bar{\phi}
を満たす.
証明.
 \bar{\phi}_{xx} + \bar{u}\bar{\phi} + E\bar{\phi} = 0 を示す.一つずつ項を計算します.
\displaystyle
\qquad \bar{\phi}_x = \phi_{xx} - (\log f)_{xx} \phi - (\log f)_x \phi_x \\
\quad \qquad = - (u+E)\phi - (\log f)_{xx} \phi - (\log f)_x \phi_{x}
 \displaystyle
\qquad \bar{\phi}_{xx} = -u_x \phi - (u+E)\phi_{x} - (\log f)_{xxx} \phi -2 (\log f)_{xx} \phi_x - (\log f)_x \phi_{xx} \\
\quad \qquad = -u_x \phi - (u+E) \phi_x - (\log f)_{xxx} \phi - 2 (\log f)_{xx} \phi_x + (\log f)_x (u + E) \phi
 \displaystyle
\qquad \bar{u} \bar{\phi} =  u \phi_x + 2(\log f )_{xx} \phi_x - (\log f)_x u \phi - 2 (\log f)_{xx} (\log f)_x \phi
 \displaystyle
\qquad E \bar{\phi} = E \phi_x - (\log f)_x E \phi
なので,
 \displaystyle
\qquad \bar{\phi}_{xx} + \bar{u}\bar{\phi} + E\bar{\phi} = - u_x \phi - (\log f)_{xxx} \phi - 2 (\log f)_{xx} (\log f)_x \phi
ここで,
 \displaystyle
\qquad (\log f)_{xx} = \left( \frac{f_x}{f} \right)_x = \frac{f_{xx} f - f_x^2}{f^2} = -u -E_0 - \{ (\log f)_x \}^2
 \displaystyle
\qquad (\log f)_{xxx} = -u_x - 2 (\log f)_x (\log f)_{xx}
となるので,
 \displaystyle
\qquad \bar{\phi}_{xx} + \bar{u}\bar{\phi} + E\bar{\phi} = 0
が分かった. \square

命題
式(L)
 \displaystyle
\qquad -\phi_{xx} - u \phi = E \phi \qquad \text{(L1)}
 
\qquad \phi_{t} = u_x \phi + (4 E - 2u) \phi_x \qquad \text{(L2)}
の両立条件は

\qquad u_t+ 6 u u_x + u_{xxx} = 0
である.
証明.
まず, (\phi_{xx})_tを計算する.
 \displaystyle
\qquad (\phi_{xx} )_t = (-u\phi - E \phi)_t \\
\qquad \qquad = -u_t \phi - (u+E) \phi_t \\
\qquad \qquad = -u_t \phi - (u + E) \phi_t \\
\qquad \qquad = -u_t \phi - (u + E) \{u_x \phi + (4E - 2u) \phi_x \} \\
\qquad \qquad =(-u_t - u u_x - Eu_x) \phi - (u+E) (4E - 2u) \phi_x
次に, (\phi_t)_{xx}を計算する.
 \displaystyle
\qquad (\phi_t)_x = u_{xx} \phi + u_x \phi_x - 2u_x \phi_x + (4E - 2u) \phi_{xx} \\
\qquad \qquad =u_{xx} \phi - u_x \phi_x - (4E-2u)(u+E) \phi\\
\qquad \qquad = \{ u_{xx} \phi - (4E-2u) (u+E) \phi \} - u_x \phi_x
 \displaystyle
\qquad (\phi_t)_{xx} = u_{xxx} \phi + u_{xx} \phi_{x} + (4u u_x - 2Eu_x) \phi - (4E-2u) (u+E) \phi_x - u_{xx} \phi_x - u_x \phi_{xx} \\
\qquad \qquad =u_{xxx} \phi + (4u u_x - 2Eu_x) \phi - (4E-2u) (u+E) \phi_x  +u_x (u+E) \phi \\
\qquad \qquad = \{ u_{xxx} + 5u u_x - Eu_x \} \phi - (4E - 2u) (u + E) \phi_x
となる.
よって,
 \displaystyle
\qquad (\phi_{xx})_t - (\phi_t)_{xx} = (u_{xxx} + 5 u u_x + u_t + u u_x) \phi  = (u_t + 6uu_x + u_{xxx} ) \phi
この式が任意の \phi 0になることは
 \displaystyle
\qquad u_t + 6uu_x + u_{xxx} = 0
と同値である. \square

*1:シュレディンガー方程式と呼ばれる式はいくつかあります.これは 1次元線形シュレディンガー方程式とも呼ばれます.

変換群と無限小変換(可積分系入門)

今回は変換群と無限小変換を説明します.
特に,微分の指数 \displaystyle e^{\frac{d}{dx}}が関数の平行移動であることを確認します.これはテイラー展開の意味付けにもなります.

今回の内容は岩波講座 応用数学ソリトンの数理』の1.1節の内容を下敷きにしていることをお断りしておきます.

(この記事は「可積分系入門」の4番目くらいの記事ですが,とりあえずこの記事を公開します.今回の内容と可積分系の関係はこの記事だけでは分からないと思います.この記事は独立に読んでも楽しめるはずです.)

群の公理と変換群


そもそも群の公理がどのように現れたのかを確認しましょう.集合 Xの要素を変換する写像  f\colon X \to Xを考えます.さらに,この写像を集めた集合  Gを考えます.ただし,全ての変換を  Gに入れるのではなく, Gが以下を満たすように写像を集めます.
 (i)  Gには Xの元を動かさない変換  e \in Gがある.つまり, eは全ての  a \in Xに対して  e (a) = aとなる写像である.
 (ii) 変換  f \in Gで動いた元を元どおりに戻す変換  f^{-1} \in Gが存在する.つまり, f^{-1}は全ての  a \in Xに対して  f^{-1} (f (a)) = f ( f^{-1} (a)) = aが成り立つ.
この性質を満たす変換の集合  G Xの変換群と呼ぶことにします.


これだけではあまり意味がありません. Xを忘れて  Gだけを考えていくことにします. Gには写像の合成で積の演算が定まります.つまり, f, g \in Gに対して f \circ g \in Gで演算を定めます.

性質
 (i)  e \in G は全ての  f \in Gに対して, f \circ e = e \circ f = fが成り立つ.
 (ii)  f \in G に対して定まる  f^{-1} \in G f^{-1} \circ f = f \circ f^{-1} = eを満たす.
 (iii)  f,g,h \in Gに対して, (f \circ g) \circ h = f \circ (g \circ h)が成り立つ.

最初の(i), (ii)は上で決めた  Gの性質からすぐに分かります.(iii)は一見要請していないように思えますが,実は変換を考えると自然に成り立つことです.確認しましょう.全ての  a \in Xに対して
 \displaystyle
\quad (f \circ g) \circ h (a) = (f \circ g) (h(a)) = f (g (h(a))) = f ( g \circ h (a)) = f \circ (g \circ h) (a)
が成り立ちます.よって,(iii)が成り立ちます.

逆に,一般に集合  G が与えられたとき,上の (i) - (iii) が成り立つ演算が成り立つものを群と呼びます.

定義
集合  G に対し,演算  a * b \in Gが定まり以下が成り立つものを群と呼ぶ:
 (i) ある元  e \in Gが存在して全ての  f \in Gに対して, f * e = e * f = fが成り立つ.
 (ii)  a \in G に対して,ある a^{-1} \in Gが存在して  a^{-1} * a = a * a^{-1} = eが成り立つ.
 (iii)  a,b,c \in Gに対して, (a * b) * c = a * (b * c)が成り立つ.

一般に考えた群は変換としての意味合いがなくなっていますが,それでも様々な性質が成り立ち重要な数学の対象になります.

変換の集まり(=変換群)をモチベーションとして群を定義しました.逆に,一般の群が与えられたときにこれを変換の集まりと思えるかという問題を考えましょう.ここで群の公理(iii)が意味を持ちます.変換群では必ず(iii)が成り立つので,群を変換の集まりと考えるためには絶対に群の公理(iii)を要請しなければいけないわけです.群を変換だと捉えたものを作用と言います.群自体には変換の意味がないので,少し要請が必要です.

定義
 G Xの作用を定めるとは,任意の  a \in Gに対し写像  a \colon X \to X が定まり以下を満たすことを言う.
 (i) 全ての  x \in Xに対して, e(x) = xが成り立つ
 (ii) 全ての a, b \in G x \in Xに対して,(a*b) (x) = a(b(x))が成り立つ.

 eは群の中では何も変化させないものだと分かっていますが,写像としてもそうあって欲しいので(i)を要請します.(ii)は少し分かりにくいと思います. a bに対して群の演算により新たに  a*bという写像が定まりますが,これは a, bを合成したものと同じであるというのが (ii)の意味です.つまり,群の演算と写像の合成が同じであるということを意味します.


以上をまとめます.変換の集合から変換群という群が定まりました.逆に,群が作用を定めていると,それは変換の集合だと思うことができます.変換の集合から定まる変換群は,その作用を考えると元の集合の変換に戻りますし,逆に,群の作用を考えて変換の集合だと考えてもそれから定義される変換群を考えれば元の群に戻ります.このように,群の公理は,変換の集合の概念と対応づくように代数を定義したものだと考えることができます.

1パラメータ変換群

 Xに作用する群の元がパラメータ付けされているものを考えましょう.実数  s \in \mathbb{R}に対して群の元  T(s) \in Gが定まるとします.実数は和により加群なので,この群の構造と  Gの群の構造に"良い関係"が成り立ってるとします.つまり以下を仮定します.
 \displaystyle
\quad T(0) = e,

\quad T(s+t) = T(s)T(t)
が成り立つとします.このような群を 1パラメータ群と呼びます(もっと厳密な定義が必要なところですが省略します).すると, e = T(s - s) = T(s)T(-s)が成り立つので, T(-s) = T(s)^{-1}が分かります.x \in Xを変換したものが  T(s)xです.実数は連続的に動かすことができるので, s \in \mathbb{R}を動かすと, T(s)xが滑らかに変わっていくのが 1パラメータ変換群のイメージです.

無限小変換

(この節は特に雑な議論をします.厳密にはLie群論の議論が必要です.)
空間 X(厳密には多様体)に作用する 1パラメータ群  Gを考えます. T(s)x微分すると,線形写像  Aを用いて
\displaystyle
\quad \frac{d}{ds}T(s) x = Ax
の用に書けたとします.これは線形の微分方程式なので簡単に解くことができて, T(s)x = e^{As}xとなることが分かります.ここで
 \displaystyle
\quad e^{As} = \sum_{n=0}^{\infty} A^{n} \frac{s^n}{n !}
です.よって, T(s) = e^{As}が分かります.式
\displaystyle
\quad \frac{d}{ds}T(s) x = Ax
1パラメータ変換  T(s)に対する無限小変換といい,Aを無限小変換の生成作用素といいます.以上のことから生成作用素  Aが分かれば,1パラメータ変換 T(s) e^{As}であることが分かります.以下では具体例を通して,この考え方の面白さを見ていきましょう.

回転

具体例を見ていきましょう.空間は2次元ベクトル空間  \mathrm{R}^21パラメータ群は回転
\displaystyle
\quad \theta \mapsto 
\left(
\begin{matrix}
\cos \theta & - \sin \theta \\
\sin \theta & \cos \theta
\end{matrix}
\right)
を考えます. \mathrm{R}^2への作用はもちろん
\displaystyle
\quad 
\left(
\begin{matrix}
x \\
y 
\end{matrix}
\right)
\mapsto
\left(
\begin{matrix}
x(\theta) \\
y(\theta) 
\end{matrix}
\right) =
\left(
\begin{matrix}
\cos \theta & - \sin \theta \\
\sin \theta & \cos \theta
\end{matrix}
\right)
\left(
\begin{matrix}
x \\
y 
\end{matrix}
\right)
です.微分をすれば,
\displaystyle
\quad \frac{d}{d \theta} 
\left(
\begin{matrix}
x(\theta) \\
y(\theta) 
\end{matrix}
\right) =
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right)
\left(
\begin{matrix}
x (\theta) \\
y (\theta)
\end{matrix}
\right)
なので,無限小変換は
 \displaystyle
A =
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right)
であることがわかります.実際,
 \displaystyle
\left(
\begin{matrix}
\cos \theta & - \sin \theta \\
\sin \theta & \cos \theta
\end{matrix}
\right)
= e^{
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right)
\theta
}
= 
\left(
\begin{matrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{matrix}
\right)+ 
\left(
\begin{matrix}
0 & - 1 \\
1 & 0
\end{matrix}
\right) 
\theta + 
\left(
\begin{matrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{matrix}
\right) 
\frac{\theta^2}{2 ! } + \dots
が成り立つことが分かります.

関数の平行移動

最後に関数の平行移動について考えます.まず,空間の  (a,b)方向の平行移動が
\displaystyle
\quad 
\left(
\begin{matrix}
x  \\
y 
\end{matrix}
\right)
\mapsto
\left(
\begin{matrix}
x (s) \\
y (s)
\end{matrix}
\right)
 = 
\left(
\begin{matrix}
x + as \\
y + bs
\end{matrix}
\right)
と定まります.この変換を使えば,関数の変換
 \displaystyle
\quad f(x,y) \mapsto f(s) (x,y) = f(x(s),y(s)) = f(x+as, y + bs)
と定めることができます.これを微分して見ましょう.
 \displaystyle
\quad \frac{d}{d s} f (s) (x,y) =\frac{d}{ds} f(x+as, y + bs)\\

\qquad \qquad \quad = \frac{\partial f}{ \partial x} (x + as, y +bs) a + \frac{\partial f}{ \partial y} (x + as, y +bs) b  \\

\qquad \qquad \quad = a \frac{\partial }{ \partial x} f (x + as, y +bs) + b \frac{\partial }{ \partial y} f (x + as, y +bs)  \\

\qquad \qquad \quad = \left( a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} \right) f(s) (x , y)
よって,無限小変換が
 \displaystyle
 \quad A =  a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y}
であることが分かる.よって,この平行移動の  1パラメータ変換群は

\quad e^{ s\left( a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} \right)}
となることが分かります.これの意味が少し分かりずらいかもしれませんが,式
 \displaystyle
\quad f(x + as, y + b s) = f(s) (x,y) = e^{ s \left( a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} \right)} f(x,y)
を考えて見てください.特に, s = 1とした時の式,
 \displaystyle
\quad f(x + a, y + b ) = f(1) (x,y) = e^{ a \frac{\partial }{ \partial x} + b \frac{\partial }{ \partial y} } f(x,y)
の右辺を指数  e^{At}の定義にしたがって計算すれば,これは, f(x+a, y + b) (x,y)を中心にテイラー展開したものであることが分かります。

まとめ

 1パラメータ変換群とその無限小変換を定義しました。平行移動はこれ自体で重要な式なので,自分で計算して納得しておいてください.

微分係数と導関数の違い

高校生で微分係数導関数の違いが分からない人が多いと思います.
今回は微分係数導関数の違いについて解説したいと思います.
ただし,それほど厳密な議論はしないので,ご了承ください.

定義

まずは定義をおさらいしましょう.

定義(微分係数

関数  f(x) x = aにおける微分係数とは
\displaystyle
\quad f'(a) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}
のことである.

定義(導関数

関数  f(x)導関数とは
\displaystyle
\quad f'(x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h}
のことである.

ほとんど違いがないですね.
結論を言うと,微分係数は接線の傾きでありこれを求めたいのですが,この微分係数を求める関数が導関数です.どうして導関数を考える必要があるのかを理解するために,まずは微分係数を計算していきます.

微分係数の計算


まずは微分係数を実際に計算してみましょう.今回は  f(x) = x^2を考えましょう.


まずは  x=0での微分係数を計算してみましょう.
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(0+h) - f(0)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(0+h)^2-0^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} h \\
& = 0
\end{align}
となるので,微分係数 f'(0) = 0となります.


次に  x = 1 での微分係数を計算してみましょう.
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(1+h) - f(1)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(1+h)^2- 1^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{2 h + h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} (2+h) \\
& = 2
\end{align}
となるので,微分係数 f'(1) = 2となります.


最後に  x = 2 での微分係数を計算してみましょう.
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(2+h) - f(2)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(2+h)^2- 2^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{4 h + h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} (4+h) \\
& = 4
\end{align}
となるので,微分係数 f'(2) = 4となります.

微分係数から導関数

毎回,微分係数を計算するのは大変です.しかし,上の計算のほとんどが同じ計算なので,工夫できないかと考えてみます.
微分係数を求めるときには二つのステップがあります.
(1) どこで微分するか  x = aを決める.
(2) 極限  \displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}を計算する.
ここで, x = aを変えるたびに毎回極限を取るのが面倒だったので,先に極限をとってしまってから,あとで  x = aを決めることにしましょう.まず  xのまま微分をとると
 \displaystyle
\begin{align}
\quad \lim_{h \to 0} \frac{f(x+h) - f(x)}{h} &= \lim_{h \to 0} \frac{(x+h)^2-x^2}{h} \\
&  =\lim_{h \to 0} \frac{2 x h+ h^2}{h} \\
& =  \lim_{h \to 0} (2x+h) \\
& = 2x
\end{align}
となります.これが導関数  f'(x) = 2xです.これに, x = 0, 1, 2をそれぞれ代入すると,
 
\quad f'(0) = 0, \quad f'(1) = 2, \quad  f'(2) = 4
となり,上で求めた微分係数を一気に求めることができました.このように,導関数さえ求めてしまえば簡単に微分係数を求めることができます.

まとめ


 x = a での微分係数は, x = aにおける接線の傾きです.つまり微分係数実数です.一方,導関数 x = aを決めれば,そこでの微分係数を返す関数です.


導関数は公式として覚えておけばいいので,微分係数を計算するには導関数に求めたい場所 x=aを代入するだけで済みます.つまり,実際に極限の計算をするのは導関数を求めるときだけなのです.実際の計算で極限を計算する必要がないのはこのためです.


図でまとめると以下のようになるでしょう.ポイントは, x = aの代入と極限をとる操作の順番を変えることです.
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17才からの微分方程式【0-0】数の方程式と関数の方程式

高校生でも分かる微分方程式の説明をしていきます。数IIと数B(特に微分と数列)を前提としますが、大事なことは復習します。また、数IIIや大学の初年度に学ぶこともついでに勉強できるように書いていきます。

高校2年生までに扱ってき方程式は解は実数や複素数など数でした。このような方程式を数の方程式と呼ぶことにしましょう。それに対して、微分方程式は解が関数になっています。

微分方程式を研究する主な理由は以下の二つです。
・物理や化学、工学で調べたい対象が微分方程式の解になっている。
・関数の性質を微分方程式を使って調べる。
この記事ではこの点について説明していきます。

数の方程式


未知の量  x yなどと実数(あるいは複素数)の四則演算を用いて得られる関係式は数の方程式です。例えば、 y^2 + 1 = 0 x+y=1などは数の方程式です。また、 \sin xなどの関数を用いて定義できる方程式も数の方程式です。例えば、 \sin^2 x + \sin x = 0は数の方程式です。 未知の量に代入して成り立つ数が方程式の解です。


そもそも、どうして数の方程式を考えるのでしょうか?それに対する答えとして、「調べたい数が方程式の解になっている」ことと「数の性質を方程式を使って調べる」の2つをあげることができます。これらの事実について確認しましょう。

調べたい数が方程式の解になっている


中学生で勉強するような例で説明しましょう。


ある長方形があるとします。その長方形の面積は  12 \textrm{m}^2だと分かっています。辺の長さは分かっていませんが、直交する二つの辺の長さの差は  4 \textrm{m}であると分かっています。このとき、辺の長さを求めるという問題です。

短い方の辺を  x \, \textrm{m}と置きましょう。すると、もう一つの辺の長さは  x+4 \, \textrm{m}と書けるので、面積の公式から
 
\quad x(x+4) = 12
という方程式が得られます。解くと  x = 2であることが分かります。


この例で大切なことは、求めたい数を文字でおけば、方程式が得られることです。つまり、求めたい数を、方程式という数の関係を通して調べることができます。このように、求めたい数が方程式という関係で与えられているという状況が基本的であり、そのため方程式が必要となるのです。

数の性質を方程式を使って調べる


方程式が与えられれば、その方程式を解くことで求めたい数が分かります。例えば、2次方程式ならば簡単に解けますが、次数が上がるにつれてどんどん難しくなり、5次以上では四則演算や平方根など高校で学ぶような数の表示では解を書くことができないということが知られています(アーベルの定理)。表示が出来なくても近似解を求める方法はいろいろあって、例えば入試問題の題材になることもある「ニュートン法」という手法もありますが、これも万能ではないということが知られています。


しかし、解を完全に求める必要がないということも多いです。解のある性質を知るだけならもっと簡単に出来るのではないでしょうか。例として、2次関数の単元で学ぶことを復習しましょう。方程式
 
\quad x^2 + ax + b = 0
を考えます。 a bは実数とします。このとき、 b <0ならば正の解と負の解があります。逆に, b>0ならば、二つの解が存在すればそれらの符号は同じになります。さらに、 a > 0, b > 0ならば、二つ解があればどちらの解も符号が負になります。(以上のことはグラフを考えれば分かるのでした。)このように、解自体を求めなくても、係数から解の符号は簡単に分ります。


少し発展的な内容になりますが、方程式の解の実部の符号が全て負になるかどうかを調べることは、特に工学で非常に重要な問題です。(この微分方程式の連載の中でも出てくるかも。)この問題の答えは「フルウィッツの安定判別法」として知られています。(wikipedia:ラウス・フルビッツの安定判別法 )大切なことは、解を求めなくても方程式の形から解の性質が分かるというところです。

関数の方程式


次に関数の方程式について考えていきましょう。関数に対しても足し算、引き算、掛け算、割り算を考えることができますが、これだけでは数の方程式と同じことしか起こりません。そこで、関数に対して定義できる他の演算を考える必要があります。その一つが微分なのですが、それよりも身近にある演算があるので、まずはそれを扱いましょう。

差分方程式


関数  f(x)に対して新たに関数  f(x+1)を返す変換を  Sと書くことにします。つまり、 S(f(x)) = f(x+1)です。「 f(x) f(x+1)は同じ  fという関数では?」と思う人もいるかもしれませんが、例えば、 x = 0を代入すると  f(0) f(1)のように違う値を返すので違う関数です。(グラフを考えれば、 f(x)を平行移動したものが f(x+1)なので、グラフが違うことも分かります。)


 Sを2回使った  S(S(f(x) ) )  S(S(f(x) ) ) = f(x+2)となります。 Sをもっと使った式も定義できますが、書くのが大変なので、 n Sを使った式  S(S(\dots S(f(x))\dots) S^n (f(x) )と書きます。 S^n (f(x)) = f(x+n)となります。ついでに、f(x)f(x+1)ではなく  f(x-1)に変換する変換も考えたいところですが、それはS^{-1} (f(x)) = f(x-1)とおきましょう。 S(S^{-1}(f(x) ) ) = f(x)となるので、整合性があります。


さて、この  Sという変換を使った方程式を考えましょう。例えば、
 
\quad S(f(x) ) = f(x) + 1
はどうでしょう。つまり、
 
\quad f(x+1) = f(x) + 1
のことです。ここで、 xの代わりに nを使って、さらに、 f(n) a_nで表すことにすると、もっと見慣れた式、

\quad a_{n+1} = a_n + 1
となることが分かります。気がつきましたか?これは漸化式です。実は、漸化式はこの Sを用いた関数の方程式なのです。もっと複雑な方程式も考えることができます。例えば、
 \displaystyle
\quad S^{3} ( f(x) ) f(x) + f(x)^2 S( (f(x) )^2) - f(x)^5 = 0
とかは難しそうです。 f(x)は調べたい関数、つまり、未知の関数なので、 y で表すことにしましょう。するとこの方程式は
 \displaystyle
\quad S^{3} ( y ) y + y^2 S( y^2) - y^5 = 0
と書くことができます。このように、未知の関数yに対して、関数の四則演算と変換  Sを繰り返し用いることで定義できる方程式を差分方程式と言います。

微分方程式


次に、微分方程式を定義します。微分方程式とは、関数の四則演算と微分を繰り返し用いることで定義できる方程式のことです。ここでいう微分とは関数  f(x)に対して導関数 f'(x)を返す変換のことです。(微分係数を得る操作も微分と呼びますが、それとは違います。)


簡単に微分の性質を整理しておきます。微分では以下の公式が成り立ちます。
 \displaystyle
\quad (i)\, \{a f(x) + bg(x) \}' = a f'(x) + b g'(x) \quad \text{(「線型性」と言います)}\\
\quad (ii)\, \{ f(x) g(x) \}' = f'(x) g(x) + f(x) g'(x) \quad  \text{(「掛け算の微分公式」や「ライプニッツ則」などと言います)}\\
\quad (iii)\, \{ f(g(x) ) \}'  = f' (g(x) ) g'(x) \quad \text{(「合成関数の微分公式」と言います)}
微分方程式を考えるときには、この公式を使うだけで十分であり、微分の定義は忘れてしまっても良いことが多いです。(別の記事で微分について復習します。)


未知の関数を  yとすると、微分方程式として,

\quad y'' + y = 0


\quad y'' = x y
などを考えることができます。

調べたい対象が微分方程式の解になる

さて、微分方程式を研究するモチベーションを説明していきます。
おそらく物理で登場する最も基本的な微分方程式運動方程式

\quad ma = F
です。ここで、 mは質点の質量であり定数です。次に、 aは質点の加速度です。 yで位置を表すことにすると、 yの時間微分  \displaystyle y' = \frac{dy}{dt}が速度であり、さらに微分したもの \displaystyle y'' =  \frac{d^2 y}{dt^2}が加速度です。さらに、 Fは質点にかかる力です。 Fは位置や速度の関数となることが多く、 F(y,y')と書くことにします。すると、運動方程式微分方程式
\displaystyle
\quad m y'' = F(y, y')
と書くことができます。この方程式を解くことで、質点の運動が分かるのです。

いくつかの例を挙げておきましょう。
・自由落下する場合、重力加速度を gとすると、かかる力は  F = -mgで与えられるので、運動方程式

\quad my'' = -mg \quad \mbox{つまり} \quad y'' = -g
となります。
・バネにつながれた点を考えると、kをバネ定数とすると、かかる力は  F = -kyと書けます。なので、運動方程式
 
\quad my'' = -ky
となります。
・最後に、空中を飛んでいる質点の水平方向の運動を考えると、空気抵抗がかかります。空気抵抗は速度に比例して大きくなるので、ある定数 kを用いて、かかる力は  F = -ky'となります。よって、運動方程式

\quad my'' = -k y'
となります。


このように簡単な例を考えるだけでもいろんな種類の微分方程式が得られます。これらの微分方程式を解くことで運動を理解することができます。物理ではもっと複雑な微分方程式が出てきます。また、化学や工学のモデルは微分方程式で記述されていることが多く、微分方程式は研究の基礎です。

微分方程式を使って解を調べる


次に、微分方程式を使って関数の性質を調べることについて例を用いて説明します。数の方程式と同様微分方程式も解を求めることは難しいため、微分方程式から解の性質を調べることが重要になります。以下の説明では \sin x \log xを使いますが、これらの微分については連載で説明します。 f(x),g(x)xの関数とすると、方程式

\quad y'' + f(x) y' + g(x) y  = 0
は線形微分方程式と呼ばれるものになっています。 \sin x \cos xは、 f(x) = 0, g(x) = 1とした方程式

\quad y'' +y = 0
の解となっています。一方、 \log x\displaystyle f(x) = \frac{1}{x}, g(x) = 0とした方程式
 \displaystyle
\quad y'' + \frac{1}{x} y' = 0
の解になっています。この方程式に現れる \displaystyle f(x) = \frac{1}{x} と解  \log xは共に  x = 0では値が定義されないことに注意しましょう。実は、方程式の  f(x), g(x)が定義されない  xと解が定義されない  xにはある関係があるのです。


さらに、 a,b,cを定数として、\displaystyle f(x) = \frac{c - (a+b+1)x}{x(1-x)}, g(x) = \frac{-ab}{x(1-x)}とおいた微分方程式
 \displaystyle
\quad y'' + \frac{c - (a+b+1)x}{x(1-x)} y -  \frac{ab}{x(1-x)}y = 0
を考えましょう。この方程式はガウスの)超幾何微分方程式と呼ばれる方程式です。a = 0, b = -1, c = 1とおくと、 \log xを解に持つ方程式になります。また、 \displaystyle a= \frac{1}{2}, b= \frac{1}{2}, c = \frac{3}{2}とおいた方程式の解を用いると、 \sin x逆関数を書くことができます。他にも、多くの基本的な関数が超幾何微分方程式の解として現れます。


物理に現れる様々な解析において、この超幾何微分方程式が現れます。超幾何微分方程式は性質を完全に知ることができるものの中である意味一番難しい微分方程式です。そのため、この方程式を勉強すれば物理を研究する上で非常に役に立ちますし、逆にこの方程式より難しい方程式は数学の研究対象になります。

おわりに


今回は微分方程式を勉強するモチベーションについて説明しました。次回は微分方程式の用語を説明します。
これから、どんどん記事を充実させていく予定です。ご意見・ご感想があれば、コメント欄に書くかtwitterのLoveブルバキにご連絡くださると嬉しいです。

おまけ


関数に対しては微分の他に  Sという変換がありました。微分 Sの両方を使った方程式は微分差分方程式 と呼ばれます。例えば、

\quad y' +S^2 (y) = y^2
特に、

\quad y' = (y, S^{-1}(y), S^{-2} (y), \dots \text{の関数} )
という形に書ける微分方程式時間遅れをもつ微分方程式と言います。つまり、微分が少し前の値を使って定まります。このような方程式は制御理論なので現れ工学上も非常に重要です。ただし、一般には難しい方程式なので研究も難しいです。

17才からの微分方程式の目次

連載「17才からの微分方程式」の目次です。
このページから全てのページにアクセスできるようにします。
書いていく内容の自分用のメモでもあります。

微分方程式について

数の方程式と関数の方程式

tetobourbaki.hatenablog.com

微分方程式の解とは? (関数の考え方 v.s. 代数的な考え方)

一階の微分方程式

原始関数 (y'=f(x))
指数関数(y' = y)

初期値問題と境界値問題

2階の線形微分方程式

ガウスの超幾何方程式

おまけ

微分係数の定義と意味

新年の抱負2018


2018年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今年は忙しくなりそうなので、
「趣味を楽しむ余裕を持ちながら、やるべきことをやっていく」
を抱負にします。

さて,今年はブログで色々書いていこうと思っているのですが、書こうと思っている内容を宣言しておこうと思います。


1.「17才からの微分方程式入門」
2.「可積分系入門」
3.「ストークスの定理への道」


ブログの残りでは、それぞれの内容と最後にいま考えていることをちらっと書いておきます。

「17才からの微分方程式入門」


今の大学の微分方程式の授業について前々から不満がありました。
また、数学や物理の研究には微分方程式を前提としているものが多いわけで、微分方程式を勉強していない高校生に研究の面白さを伝えることが根本的に難しいと考えていました。


そこで、全く新しい微分方程式の連載記事を書いていこうと思います。
せっかくなので、高校生にも分かる内容にしようと思っています。
具体的には数IIと数Bで微積分と数列を勉強していれば理解できるものを書きたいと思っています。
(もっと言えば、この連載記事の序盤で数IIIや大学初年度で学ぶことも導入します。)


「全く新しい」と書きましたが、微分方程式の授業で学ぶであろう「求積法」「初期値問題」「定数係数線型方程式」をほとんど扱わないで、他のトピックを中心に解説しようと思います。
それは、これらのトピックが(特に工学などで)最低限身につけるべきことであるものの、面白くはないと感じるからです。
もっと言えば、これらを中心とした授業だと、「非正規形微分方程式」と「境界値問題」が授業で扱われないことになります。
「非正規形微分方程式」には楕円関数が満たす微分方程式があります。
また、常微分方程式で「境界値問題」に触れておくと、偏微分方程式を学ぶ時にも役に立つでしょう。
また、僕は微分ガロア理論を勉強しているので、微分代数の考え方もお見せできればと思います。


「17才からの微分方程式入門」は早速書き始めようと思っています。
2週間に一回の更新を目標にします。
よろしくお願いします。
(お正月からずっと内容を考えていたのですが、正直、高校生が理解でき、さらにすでに学んだ人にも喜んでもらえる内容を考えるのは難しい。とりあえず、高校生に説明することを第一の目標にします。)

可積分系入門」


可積分系はずっと勉強したいと思っている分野です。
日本で研究が盛んであるものの、あまり一般向けの解説がない(それどころか、数学の他の分野の人にあまり理解してもらえてない?)分野だと思います。
そこで、自分なりの理解ではありますが、勉強したことを少しずつ、分かりやすく説明できればと考えています。
この連載は自分の勉強進度に合わせて少しずつ更新していきます。

ストークスの定理への道」


ブルバキの当初の目標はストークスの定理をちゃんと説明した教科書を書くことでした。
そのこともあり(そして定理の美しさもあり)僕の一番好きな定理はストークスの定理です。


そこで、ストークスの定理を自分なりにまとめた文章を作っておきたいというのが、この連載の一番の動機です。
ほぼ書く内容は決まっているのですが、できるだけ図を使って説明したいので、定期的に少しずつ書いていこうと思います。
2ヶ月に一回の更新で、5回か6回で終わらせることを目標にします。

やりたいこと・できること


1年くらい前にツイッターを始めました。
そこで感じたのは、ツイッターを使えば同じ興味関心を持つ人といくらでも繋がれるということです。
本当に凄いと思うのは、ツイッターを通してでないと絶対に出会わなかったであろう人とまで簡単に会話できることです。


一方で、ツイッターではアカデミックに関するくらいニュースが頻繁に流れています。
日本の研究者の環境に対してポジティブな未来像を思い浮かべることは正直難しいです。


でも、アカデミアがいくら栄えていても、その研究の内容が一般の人に興味を持ってもらえなければ、それは全く空虚で意味のないことではないでしょうか。
逆に、アカデミアが死んだとしても、一般の人の中に数学や科学への興味や好奇心を持っている人がいればなんとかなるのではないかとも思います。


そこでまだ漠然とした妄想でしかないのですが、社会でもっと数学や科学を盛り上げることができないかなぁと思っています。
学生や社会人が中心になって数学や科学を楽しめる環境が作れないかなと思います。
そんなことのサポートをしたいというのが最近考えていることです。
(個人的な話をすると僕はもう少しアカデミアで頑張らないといけないのですが)


ただ、ツイッターだけではダメだと思っています。
とりあえず、一つにはブログ、もう一つにはスカイプでのゼミでいろんな人と勉強しながら、妄想をもっと具体化しようと思います。