記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

不定積分が初等関数で表せないものについて(Liouvilleの定理)

ご存知の方も多いように、e^{x^2} \frac{\sin x}{x}の不定積分は高校で習うような関数(初等関数)では書くことができません。
今回は、このことを証明するために使われるLiouvilleの定理とその応用を紹介します。
今回の内容では、Liouvilleの定理の証明や"初等関数で書けない"とはどういうことかまで説明することができません。
今回を含めて4回くらいで、ほぼ完全に理解できる内容を書きたいと思っています。
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Liouvelleの定理とLiouville判定法

まずはLiouvilleの定理を紹介します。これは、不定積分が初等関数で書けることの必要条件を与える強力な定理です。

Liouvilleの定理
f(x)の不定積分が初等関数で書けるためには、複素定数 c_1 ,\, \dots ,\, c_n \in \mathbb{C}と有理関数 g_1 (x) ,\, \dots ,\, g_n (x) ,\, h(x)が存在して、
 { 
\displaystyle
\begin{equation}
f(x) = \sum_{j=1}^n c_j \frac{g_j^{\prime} (x)}{g_j (x)} + h^{\prime} (x)
\end{equation}
}
と書けることが必要かつ十分である。
2月13日追記
このLiouvilleの定理の表現には大きな間違いがありました。Liouvilleの定理の証明の記事で訂正した定理を述べます。以下のLiouville判定法は問題無いです。

特別な場合には、もっと簡単な定理があります。

Liouville判定法
有理関数 f(x) ,\, g(x)に対して、f(x)e^{g(x)}の不定積分が初等関数で書けるためには、ある有理関数 h(x)が存在して、
 { 
\displaystyle
\begin{equation}
f(x) = h^{\prime} (x) + h(x) g^{\prime} (x)
\end{equation}
}
と書けることが必要かつ十分である。

Liouville判定法はLiouvilleの定理と定理の証明のアイデアから導くことができます。

e^{x^2}が初等関数で書けないことの証明

Liouville判定法を用いて、e^{x^2}が初等関数で書けないことを証明しましょう。
まず、Liouville判定法を満たす有理関数h(x)があったとし、互いに素な多項式p(x),\,q(x)h(x) = p(x)/q(x)と書けたとします。
判定法の満たすべき式より1=h^{\prime}(x) + 2h(x) xなので、計算すると
 {
q(x) \{ q(x) -2p(x) x - p^{\prime} (x) \} = - q^{\prime} (x) p(x)
}
となることが分かります。
よってq^{\prime} (x) p(x)q(x)で割り切れる。p(x),\, q(x)は互いに素なので、 q^{\prime} (x)q(x)で割り切れる。
このことはq(x)が定数、つまり、h(x)多項式であることを意味します。
再び、1=h^{\prime}(x) + 2h(x) xを考えると、左辺は0次の多項式であるが、右辺はh(x) \neq 0である限り1次以上の多項式である。
よって、矛盾である。
もちろん、h(x) = 0でも矛盾。
つまり、Liouville判定法を満たす有理関数h(x)は存在しない。

厳密な証明に向けて

一応証明はできました。
特に、e^xの不定積分は書けるのに、e^{x^2}の不定積分が書けない理由が、Liouville判定法の式から来ているということが分かると思います。
とりあえず、ここまでは前提知識が無くても分かっていただけると思います。
しかし、
a. 初等関数で書けないことの厳密な定義
b. Liouvilleの定理およびLiouville判定法の証明
がまだ説明できていません。
そして、それらの説明には、
c. 微分体の理論
が必要です。
これらのことは別の記事で説明しようと思います。
(おそらく、b. がかなり大変になります. )

参考文献
R. C. Churchill, Liouville's Theorem on Integration in Terms of Elementary Functions.
M. Rosenlicht, Liouville's Theorem on Functions with Elementary Integrals.

a.初等関数で書けないことの厳密な定義については記事にしました。
tetobourbaki.hatenablog.com
また、Liouville判定法の証明に使う補題に関する以下の記事も書きました。
http://tetobourbaki.hatenablog.com/entry/2017/01/15/121054tetobourbaki.hatenablog.com


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初等関数で書けないとは、どういうことか

 e^{x^2}の不定積分は計算できない、
もっというと、初等関数では原始関数が書くことができないと言われます。
今回は"初等関数で書ける"ことの厳密な定義を述べます。
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微分体の復習

さっと微分体や微分体の拡大について復習します。
まず、 Kを体とします。簡単のため、標数は0としておきます。
Kが_微分体_であるとは、写像\partial : K \to Kが存在して、
 (a.) 線型性、つまり、 \partial(a+b) = \partial (a)+ \partial (b) ,\, a ,\, b \in K;
 (b,) Leibnitz則、つまり、 \partial(ab) = \partial (a) b + a \partial (b) ,\, a ,\, b \in K
の二つの性質が成り立つことを言います。
簡単に a^{\prime} = \partial (a) と書くことにしましょう。
 C_K := \mathrm{Ker} (\partial )は体になることが知られています。
 C_KKの定数体と呼びます。


有理関数体K = \mathbb{C} (X)は普通の意味の微分微分体になります。
定数体はもちろん\mathbb{C}です。
微分体ではその元の代数的な関係のみを見ており、関数ということを忘れています。
これは長所であり短所でもあります。
微分体では商の微分公式など、様々な公式が成り立ちますが、合成関数の微分公式は素朴には成り立ちません。
というよりも、まず合成関数が素朴には定義できません。
ここの扱いが、今回の記事のポイントになっています。


次に、微分体の拡大について説明します。
体の拡大 K \subset Lが存在し、K,\, Lが共に微分体であり、なおかつ、L微分Kへの制限がK微分と一致するときに、
 K \subset L微分体の拡大と言います。
K微分体、LKの単拡大L = K (a)の場合を考えて見ましょう。
まだ、a微分が定まっていないため、L微分体ではありません。
非常に強力な微分体の性質として、
 ・a \in LK上で代数的なら、K \subset L微分体の拡大となるように、L微分体の構造が一意に定まる。
 ・a \in LK上で超越的なら、任意の元 b \in Lに対して、\partial (a) = bとなる微分体の拡大K\subset Lとなるように、L微分体の構造が一意に定まる。
というものがあります。
この性質は、微分体の拡大を考えるときに常に頭に置いておくべきものです。

"初等関数で書ける"の直感的な意味

少し話が変わって、不定積分が初等関数で書けるということの意味を考えてみましょう。
初等関数とは高校で勉強する関数のこととします。
具体的には、多項式、有理式、三角関数、指数関数、対数関数が高校で勉強する関数です。
また、これらを四則演算することで表される関数や、初等関数を係数とする代数方程式の解、関数の合成も初等関数と呼ぶことにしましょう。
あと、初等関数の微分も初等関数とします。
よって、\sin^2 ( e^{x^2}) \sqrt{\log(x)-x}などは初等関数です。


すぐに分かることですが、\displaystyle \sin x = \frac{e^{ix}- e^{-ix}}{2i}などを考えれば、
初めの段階で三角関数を初等関数に入れる必要はありません。
つまり、初等関数とは、有理関数体\mathbb{C} (X)から始めて、
(i) 四則演算、(ii)微分 (iii)代数方程式を解く、(iv)指数関数に代入する、(v)対数関数に代入する、(vi)合成をとる、を繰り返し行うことで得られる関数である
と定義することができます。
これが古典的な意味での初等関数です。


さて、初等関数で"不定積分が"書けるという意味を考えましょう。
例えば、"ある不定積分\log(\sin(x) + \sqrt{x})と書ける"とはどういうことでしょうか?
\sqrt{x} \log(x)は実数の範囲では、正の実数で定義される関数だと考えることが多いでしょう。
複素数の関数と考えても、原点が特異点であり多価関数です。
つまり、素朴な意味では関数ではないですし、毎回定義域や分岐を考えるのでしょうか?

F(x)f(x)の原始関数であるとは、単にF^{\prime} (x) = f(x)であることでした。
つまり、積分をするときには、微分がどうなるかしかそもそも考えていません。
つまり、関数であることは問題外だったわけです。
上で挙げた例でも、
 {\displaystyle
 \left\{ \log(\sin(x) + \sqrt{x}) \right\}^{\prime} = \frac{1}{\sin(x) + \sqrt{x}} \left\{ \cos (x) + \frac{1}{2 \sqrt{x}} \right\}
}
と計算できるため、関数としてどうであろうと、 \displaystyle \log(\sin(x) + \sqrt{x})  \displaystyle \frac{1}{\sin(x) + \sqrt{x}} \left\{ \cos (x) + \frac{1}{2 \sqrt{x}} \right\}の原始関数であると分かるわけです。

"初等関数で書ける"ことの微分体による定式化

さて、微分体によって、初等関数で書けることを定式化しましょう。
 K微分体とします。
まず、指数関数への代入と対数関数への代入を考えます。
a \in Kに対して、e^a \in Kであることの意味を考えます。
\displaystyle
(e^a)^{\prime} = e^a a^{\prime}
であることを期待するので、
\displaystyle
\frac{b^{\prime}}{b} = a^{\prime}
となるときに、 b aの指数といい e^{a}と書くことにします。
任意の定数 c \in C_Kに対して、\displaystyle \frac{(c e^{a}))^{\prime }}{ce^{a}} = a^{\prime}
となるので, ce^a aの指数です。
つまり、 e^{a}という表現には定数倍だけ不定性があるのですが、原始関数を求めるという目的の下では問題はありません。
むしろ、これが自然であるとも考えられます。
同様に、
 \displaystyle
b^{\prime} = \frac{a^{\prime}}{a}
となるときに、baの対数といい \log aと書くことにします。
指数の場合と同様の問題点はあります。


前節の(i)-(vi)ふまえて定式化したいのですが、(i)は体であること、(ii)は微分体であること、(iii)は代数的であることで定義できます。
上のことと合わせることで、(i)-(v)については容易に定式化できます。
微分体の拡大K \subset Lが初等拡大であるとは、拡大の列
\displaystyle
K = K_0 \subset K_1 \subset \dots \subset K_N = L
が存在し、 各拡大が単拡大 K_{i+1} = K_i (a_i) ,\, a_i \in K_iでそれぞれ以下のいずれかの場合になっていることをいう:
 (a)  a_iK_i上代数的;
 (b)  a_iK_iの元の指数;
 (c)  a_iK_iの元の対数。
特に、K = \mathbb{C} (X)のとき、ある初等拡大K \subset LLの元を初等関数という。
これで、(i)-(v)については定式化できました。


微分体は関数としては扱っていないので、問題は(vi)の合成をとる操作です。
しかし、実は微分体の意味での初等関数と古典的な意味での初等関数は同じです。
つまり、初等関数と初等関数の合成(に対応する元)は初等関数になっています。
最後にこれを示しましょう。

少しトリッキーな議論をします。
例えば、\displaystyle (e^{g}) \circ f = e^{g\circ f} なので、 gfの合成が定義されていれば、e^gfの合成は定義できます。
このような議論をするために必要な式を列挙すると、
\displaystyle
\begin{align}
(g_1 \pm g_2) \circ f &= (g_1 \circ f) \pm (g_2 \circ f)\\
(g_1 \cdot g_2) \circ f &= (g_1 \circ g_2) \cdot (g_2 \circ f) \\ 
(g_1 / g_2) \circ f &= (g_1 \circ g_2) /(g_2 \circ f) \\ 
g^{\prime} \circ f &= \frac{( g\circ f )^{\prime}}{f^{\prime}}\\
 (e^{g}) \circ f &= e^{g\circ f}\\
 (\log g) \circ f &= \log (g \circ f)\\
 (g_1 \circ g_2) \circ f &= g_1 \circ (g_2 \circ f)
\end{align}
となります。
また、 gが代数的で、 g^n + a_1 g^{n-1} + \dots + a_n = 0となるとき、

(g \circ f) ^n + a_1 (g\circ f) ^{n-1} + \dots + a_n = 0
より、g\circ fも代数的。
つまり、代数的元との合成は代数的な元であることが分かる。
以上の公式を用いると、g\circ fが定義できるかを考えるためには、gをどのような操作で作ったか辿っていき、最初の段階でfとの合成関数が定義できていれば、g\circ fが定義できることが分かりました。
さて、最初は有理関数体から始めたわけですが、有理関数自体も定数\mathbb{C}と不定元Xの四則演算で書けていることに注意しましょう。
よって、初等関数は定数と不定元から(i)-(vi)の操作で作られるわけなので、定数体と不定元がfと合成が定義できていれば全ての議論が終わります。
定数c \in \mathbb{C}に対しては c \circ f = c、不定元に対しては X \circ f = fと通常通りに定義できる(合成が初等関数である)ので、任意の初等関数同士の合成も初等関数であることが分かりました。

まとめ

初等関数で書けることは、初等拡大に入っていることと言い換えることができると分かりました。
微分体とは言え、ガロア理論で方程式を議論するのと近い雰囲気が漂ってきましたね。
残念ながら、微分ガロア群を使わずともLiouvilleの定理は証明できるので、そうします。
実は初等拡大と微分ガロア群は関係するみたいなのですが、僕が完全にはフォローできていません。

今回は結構頑張って書いたので疲れました。
Liouvilleの定理の証明も近いうちに書きますね。

参考文献
A. G. Khovanskii, On solvability and unsolvability of equations in explicit form

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Σの公式の秘密

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今回は、数列の単元のΣの公式について書きます。

Σの公式を覚えていますか

高校生や高校生だったみなさんの中には、k^2k^3などの和の公式、いわゆるΣの公式に悩まされた(いる)人が多いのではないのでしょうか?
具体的には、以下のようなものでした。
  { \displaystyle
\begin{align}
\sum_{k=1}^n k &= \frac{1}{2} n (n + 1) \tag{1}\\
\sum_{k=1}^n k^2 &= \frac{1}{6} n (n + 1)(2n+1) \tag{2}\\
\sum_{k=1}^n k^3 &= \frac{1}{4} n^2 (n + 1)^2 \tag{3}
\end{align}
}

これらの公式の何が難しいって、微妙に規則的ではないところですね。
本質的な公式ではないことが予想されます。
何かもっと美しい和の公式はないのかなぁ(溜息)。

美しき超Σ公式

さっそくですが、以下の公式を見てください。
  { \displaystyle
\begin{align}
\sum_{k=1}^n k &= \frac{1}{2} n (n + 1) \tag{4}\\
\sum_{k=1}^n k(k+1) &= \frac{1}{3} n (n + 1)(n+2) \tag{5}\\
\sum_{k=1}^n k(k+1)(k+2) &= \frac{1}{4} n(n+1)(n+2)(n+3) \tag{6}
\end{align}
}
明らかな規則性があって非常に綺麗です(歓喜)。
この公式の裏には何かが隠れていると想像ができますね。
とりあえず式(4)(5)(6)を"超Σ公式"とでも呼ぶことにしましょう。(適当です。)
この公式は、Σ公式でも証明できますし、数学的帰納法でも証明できます。
また、超Σ公式から、Σ公式を証明することができます。
とは言え、超Σ公式は使いにくいです。
今回の目的は、超Σ公式の裏には何があるかを解明することです。

超Σ公式の解釈

さて、まずは超Σ公式を一般的な形に書いておきましょう。
式(4)は1乗,、式(5)は2乗、式(6)は3乗に対応していますね。
 m乗の超Σ公式は以下のように書けます。
 {\displaystyle
\begin{equation}
\sum_{k=1}^n k(k+1)\cdots (k+m -1) = \frac{1}{m+1} n(n+1)\cdots (n+m) \tag{7}
\end{equation}
}
この一般的な公式(7)を解釈するわけです。
いろいろ考えられそうです。みなさんも考えてみてください。

残念ながら、僕には場合の数による解釈しかできませんでした。
これを説明します。
n個の区別がつくものからm個を選び並べる場合の数を _nP_mとします。
これを用いると、式(7)は
 {\displaystyle
\begin{equation}
\sum_{k=1}^n {}_{k+m-1} P_m = \frac{1}{m+1} {}_{n+m} P_{m+1} \tag{8}
\end{equation}
}
と書けます。
場合の数の公式と見るには、式(8)を変形してみましょう。
 {\displaystyle
\begin{equation}
{}_{n+m} P_{m+1} = (m+1) \sum_{k=1}^n {}_{k+m-1} P_m \tag{9}
\end{equation}
}
この式(9)は右の添字を一つ下げて Pを計算する公式とみることができます。
これに近いことは Cでもありました。

場合の数の公式を思い出す。

以下 n > mとします。
パスカルの三角形から簡単に得られる以下の公式を思い出しましょう。
 {\displaystyle
\begin{equation}
{}_{n+1} C_{m+1} = {}_n C_m + {}_n C_{m+1} \tag{10}
\end{equation}
}
この公式は、場合の数としても解釈できます。
つまり、 n+1個からm+1個を選ぶとき、任意の一つを考えて、
それが含まれる場合は残りn個からm個選ぶ場合の数、それが含まれないときは残りn個からm+1個を選ぶ場合の数、それらを足せば良いという公式です。

同様に考えると、この公式の Pのバージョンは
 {\displaystyle
\begin{equation}
{}_{n+1} P_{m+1} = (m+1) {}_n P_m + {}_n P_{m+1} \tag{11}
\end{equation}
}
となることが分かります。
これを繰り返す使うと、
 {\displaystyle
\begin{align}
{}_{n+1} P_{m+1} &= (m+1) {}_n P_m + {}_n P_{m+1}  \\
&= (m+1) {}_n P_m + (m+1) {}_{n-1} P_{m} + {}_{n-1} P_{m+1} \\
&= \dots \\
&= (m+1) {}_n P_m + (m+1) {}_{n-1} P_{m} + \cdots + (m+1) {}_{m+1} P_{m} + {}_{m+1} P_{m+1} \\
&= (m+1) ( {}_n P_m +  {}_{n-1} P_{m} + \cdots + {}_{m+1} P_{m} + {}_{m} P_{m}) \\
&=(m+1) \sum_{k=1}^{n - m + 1} {}_{k+m-1} P_m\tag{12}
\end{align}
}
となります。
途中で {}_{m+1} P_{m+1} = (m+1) {}_{m} P_{m}を使っていることに注意。


式(12)のn+1n+mに書き換えることで・・・
超Σ公式(9)が導かれます。
お疲れ様でした。


・・・まあ、公式(12)自体は重要ではあるので悪くはないですが、k^mの和公式としてはどうでしょう。
もっといい解釈をご存知な方は是非教えていただけると嬉しいです。

おまけ

式(12)の形では分かりにくいので、例を最後に示しておきます。
 {\displaystyle
\begin{align*}
{}_6 P_2 &= 2({}_5 P_1 + {}_4 P_1 + {}_3 P_1 +{}_2 P_1 + {}_1 P_1) = 30\\
{}_5 P_3 &= 3({}_4 P_2 + {}_3 P_2 + {}_2 P_2) = 60 \\
\end{align*}
}
いかがでしょうか。

 

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「正則関数」という用語を使うの止めたい

「正則関数」の何がおかしいか

複素関数論を勉強して少し経ってから、正則関数という用語がおかしい、もっと言うと誤訳であることに気がつきました。ついでに言うと、有理型関数というのもあまり良くない用語でしょう。これらについて、どこがおかしいかを述べ、改善案を示します。

 まず、前提知識を説明しておきます。一般に「正則関数」は「holomorphic function」の訳であると考えている人が多いです。しかし、こう考えると明らかな誤訳です。「正則関数」は「holomorphic function」の訳ではありません。

 

「正則関数」は「regular analytic function」の訳である

上記の通りです。

このことは高木貞治の『解析概論』に書いてあります。もう少し言うと、regular analytic function つまり「正則な解析関数」が正確な訳ですが、『解析概論』で単に正則関数と呼ぶと書いてあります。僕は、この高木先生の訳を何も考えず使っている人が多いのだと考えています。高木先生は regular analytic function だと考えているので全く問題はないのですが、holomolphic の訳だと考えている人がほとんどなのが問題なのです。ちなみに regular analytic function という用語は、例えば、Weylの『The concept of a Riemann surface』でも用いられています。holomorphic のどこにも「正則」という語がないにも関わらず、「正則関数」と呼ぶのには、そもそもの英語が holomorphic ではなくregular analyticだからなのです。

 それにも関わらず、「正則関数」は holomorphic function であるという説明しかしていない日本語の本ばかりなのは、問題なのではないのでしょうか? 確かに用語が指す対象は同じなのですが、その用語を使う意識は全く違います。

「holomorphic」と「meromorphic」の意味について

 holomorphic はギリシャ語の holos と morphe からなる造語です。 holosは「全体」を表すギリシャ語であり, morpheは「形」を表す言葉です。morphismという語を数学ではよく使うので morphe の方は馴染みがあるでしょう。単に一点でテイラー展開できることを表すなら analytic でいいので, holomorphic function は考えている領域全体テイラー展開できることを強調する用語と解釈できます。

 一方、meromorphic は meros とmorphe からなる造語です。ネットで調べてみると、meros が「比」の意味だと考えておられる方がいましたが、これは「部分」の意味であることは間違いないでしょう(専門用語の辞書によると、生物学などの専門用語で moros を使う場合も「部分」の意味らしい。) 実際、meromorphic function は孤立特異点以外ではテイラー展開できる(さらに、その孤立特異点は極である)ものでした。

「meromorphic」を「有理型」と訳すことがダメな理由

meromorphic を「有理型」と訳すことや、meromorphic の meros が「比」であると解釈することには共通の認識があると考えています。複素平面において、meromorphic function は holomorphic function の商で書けるという性質があります。これが「有理関数」との類推から上で述べたような認識の原因となっているのでしょう。確かに、「有理型関数」を初めからそのような認識で捉えるなら、それほど悪くはないのかもしれません。しかし、この性質はそれほど簡単ではない(基本的ではあるが、教えない授業も多いはず)です。そもそも meromorphic の訳としては全くダメです。

 もっというと、リーマン球面上の有理型関数は複素平面上で有理関数であるという性質もあります。これのせいで、有理関数と有利型関数がごっちゃになるという教育上の欠点があります。おそらく、holomorphic と meromorphic が対比されていることを日本語で気がつくことは不可能でしょう。教育的にも、holomorphicは「全体」、meromorphicは「部分」というように定義からすぐ結びつく用語を採用することが必要でしょう。

私の考える対案

それでは、どのような用語にすればいいかを考えてみます。

 まず、岩波基礎講座では holomorphic は「整型」、meromorphicは「有理型」が使われていますね。「正則関数」よりはずいぶん良い訳です。morpheに対応して、共に「型」の言葉が使われていることも非常に良いです。ただ、「有理型」が他の言葉にできないかとは考えたくなります。

 僕は、用語の作り方、特に、翻訳語については中国語に従えばたいてい問題ないと考えています。中国語では、holomorphic は「全純」、meromorphicは「亜純」という用語を採用しており、上で述べた私の解釈と同じであることが分かります。岩波のようにmorpheの対応はないものの、さすが中国という感がありますね。

 僕の結論としては、「整型関数」を採用し「有理型関数」を他の用語にする、もしくは、中国の訳を使うあたりで良いかなと思います。二つの良いところをとって、「整型関数」と「亜整型関数」でもそんなに悪くないと思います。

 

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あたりまえだけど、とても大切なこと

タイトル あたりまえだけど、とても大切なこと 子どものためのルールブック

著者 ロン・クラーク

訳者 亀井よし子

出版社 草思社

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ルール1 大人の質問には礼儀正しく答えよう

ルール4 人の意見や考えを尊重しよう

ルール15 宿題は必ず提出しよう

などなど・・・

これらは小さいときに、親や先生から何度も言われてきたのではないでしょうか?

この本は、アメリカの素晴らしい小学校教師であるクラークさんが、小学校の担当クラスで実際に採用しているルールを、感動的なエピソードとともに紹介するものです。

 

クラークさんは、ここで紹介するルールは単に学校生活のためではなく、子ども達の将来のために身につけるべき習慣であると考えています。

例えば、ルール1は、人に対して敬意を持って接すること、そのことは大人とコミニュケーションをとるための便利な「道具」であるとの考えからきたものです。

この本で書かれているルールは、人のため自分のためになるものばかりだけど、ついつい忘れがちのことばかりです。

実際、この本を読んでずいぶん考えさせられました。

これらのルールを実行できる人が増えれば、世界はもっと幸せになるでしょう。

人間愛が詰まった本だと僕は思います。

 

この本を魅力的にしているのは、クラークさんの人間性と実際の教員生活で出会ったエピソードでしょう。

小学校ですから、思わぬ困難もあるのですが、クラークさんがどう立ち向かったか、小学生と共にどのように乗り越えていったか。

ルールの大切さがエピソードによって引き立っています。

学校を離れた日常生活での、クラークさんの個人的なエピソードも印象的なものが多いです。

 

僕は、たくさんの人にこの本を読んでほしいと思います。

子どもではなく、むしろ大人で必要とする人が多いでしょう。

そして、この本が人生の指針となることでしょう。

おまけ

教育に興味がある人や教員の人は

ルール42 学校に<ドリトス>をもってこない!

というルールについて考えてほしいと思います。

このルールは教育実践において大切な視点があり、また非常に応用がきくものであると思います。

このルールの意図が気になったら、ぜひこの本を手にとってください。

 

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関数論の古くて新しい視点 アンリ・カルタン「複素関数論」

タイトル  Elementary Theory of Analytic Functions of One or Several Complex Variables

著者 Henri Cartan

出版社 Dover

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 私が複素関数の面白さに目覚めた本

ブルバキのメンバーのアンリ・カルタンによる複素関数論の本です。
 特徴としては、
  1. 形式ベキ級数の理論をフルに使った導入
  2. 微分形式を前提にした積分
  3. 多変数関数, 楕円関数, 微分方程式と様々な話題が書かれている
などが挙げられます。英語の本ですが翻訳もあるみたいです。
 

内容

 日本の講義や本では形式ベキ級数の理論があまり扱われないと思います。
形式ベキ級数とは収束するとは限らない級数であり, その中でも収束する(収束半径が0でない)ものが複素関数論の主役です。
複素関数では正則な(微分可能な)関数は解析的なので, 形式ベキ級数の方が正則関数よりも一般的な概念となっていることにも注意してください。
一般的と言っても, ベキ級数だけで, 可逆元, 逆関数, 微分などの理論が簡単に扱えます。
その特殊なケースとして正則関数を考えることで, より正則関数の特徴を明確に理解することができます 。
 
数学の他の分野の理論が関数論でいかに使われるかということを知ることができます。
逆に言うと、想定する前提知識が少し多く、この本の欠点ではあるでしょう。
環や体の言葉を少し知っていないと読み辛いかもしれません。 
また、積分微分形式が使われているのは, この本を読む上で少しハードルになっているかもしれません。
また, 様々な話題が書かれていると言っても, 紹介だけで終わっているものもあります。

 まとめ

  • 新しい見方ができるようになる
  • 様々な話題を知ることができる
  • 複素関数論のテキストの1冊目としては難しいかも
複素関数論の2冊目の本としてはこれ以上のものは無いのでは?
このような素晴らしい本が安く買えるのはDoverの魅力ですね。

 

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