記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

位相性と正則性

位相空間を一般化した収束空間はもちろん位相空間とは限りません.では,位相的であるという性質は何を意味するのでしょうか.実は,正則性の条件の類似であることが知られています.今回はこのことを紹介します.この記事では基本的に以下の記事の知識を仮…

収束空間について

位相空間をフィルターを使って論じたブログに反響がありました.特に,位相空間を一般化した前位相空間について知りたいという声がありました.位相空間が一般化できるとは思いもしなかった人がかなりいるのではないかと思います.tetobourbaki.hatenablog.c…

位相空間論とフィルター

位相空間論の性質を論じるにあたって,フィルターが非常に便利です.この記事では,フィルターの使い方を解説します. 最初の節では,フィルターやフィルターの収束を定義します.位相空間の基本的な用語をフィルターで言い換えていきます.次の節では,コン…

数学のpdfを書いています

書きながら公開している数学のpdfをブログでも見れるようにしようと思います。・微分ガロア理論入門 微分ガロア理論をほとんど前提知識を仮定せず解説しています。 微分ガロア理論入門 - Google ドライブ微分ガロア群を定義したところまで進んでいます。次は…

新入生に勧める数学書2018

ツイッターで大学新入生にオススメの数学書を、ハッシュタグ #新入生に勧める数学書2018 で募集しました。タグを作りました。皆さん、自由に語りましょう。いろんな立場の人が選ぶことで、楽しいリストができると思います。#新入生に勧める数学書2018#新入生…

q類似とテイラー展開(可積分系入門)

今回は類似を導入して,多項式のテイラー展開の類似を解説します.(一応,以下の記事の続きですが,この記事だけで独立して読むことができます.) tetobourbaki.hatenablog.com q類似とは 様々なq類似 多項式のテイラー展開 まとめ q類似とは は 以外の実…

整数の分割とヤング図形(可積分系入門)

この記事の続きですが,本記事だけで楽しめます. tetobourbaki.hatenablog.com 当分は可積分理論に現れる基本的な手法を見ていきます. 組み合わせ問題 組み合わせ問題は一般に解くことが難しいです.組み合わせ問題の面白さというのは、全ての組み合わせを…

可積分理論入門(イントロダクション)

「可積分理論入門」というタイトルではありますが,自分で勉強しつつ,勉強したことをまとめておこうというのが,この記事のモチベーションです.それでは,始まり始まり. 可積分系とは何か KdV方程式 Darboux変換 KdV方程式とLax pair 応用例 まとめ 付録 …

変換群と無限小変換(可積分系入門)

今回は変換群と無限小変換を説明します. 特に,微分の指数 が関数の平行移動であることを確認します.これはテイラー展開の意味付けにもなります.今回の内容は岩波講座 応用数学『ソリトンの数理』の1.1節の内容を下敷きにしていることをお断りしておきま…

微分係数と導関数の違い

高校生で微分係数と導関数の違いが分からない人が多いと思います. 今回は微分係数と導関数の違いについて解説したいと思います. ただし,それほど厳密な議論はしないので,ご了承ください. 定義 微分係数の計算 微分係数から導関数へ まとめ 定義 まずは…

17才からの微分方程式【0-0】数の方程式と関数の方程式

高校生でも分かる微分方程式の説明をしていきます。数IIと数B(特に微分と数列)を前提としますが、大事なことは復習します。また、数IIIや大学の初年度に学ぶこともついでに勉強できるように書いていきます。高校2年生までに扱ってき方程式は解は実数や複…

17才からの微分方程式の目次

連載「17才からの微分方程式」の目次です。 このページから全てのページにアクセスできるようにします。 書いていく内容の自分用のメモでもあります。 微分方程式について 数の方程式と関数の方程式 微分方程式の解とは? (関数の考え方 v.s. 代数的な考…

新年の抱負2018

2018年明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 今年は忙しくなりそうなので、 「趣味を楽しむ余裕を持ちながら、やるべきことをやっていく」 を抱負にします。 さて,今年はブログで色々書いていこうと思っているのですが、書こ…

Zornの補題を使った代数的閉包の存在証明

2017年はZornの補題の便利さが身に沁みた一年でした. 例えば、超越基底の存在はZornの補題で簡単に証明できました.(スカイプで『微分体の理論』を読むゼミをやっていて,そこで勉強しました.) 一方で,雪江『代数学2 環と体とガロア理論』にも書いて…

吉田善章『応用のための関数解析』

今回は関数解析の本の感想を書きます. 関数解析の使い方が分かる非常に面白い本です.新版 応用のための関数解析―その考え方と技法 (SGC BOOKS)作者: 吉田善章出版社/メーカー: サイエンス社発売日: 2006/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商…

微分ガロア理論の文献

微分ガロア理論に関する文献をまとめます. 微分ガロアに限らず, それを勉強するために必要な知識や, 関連する分野の文献もまとめます. 著者とタイトルは書きますが, その他のデータ(出版社や年度)まで書くのは大変なので省略することがあります. このブログ…

シンプソンの公式と誤差評価

今回は数値積分の一つの手法であるシンプソンの公式を紹介します. この公式が単なる近似公式ではないことを見ていきます.(数学が苦手でない人はシンプソンの公式から読むと良いかもしれません) 数値積分とは 台形公式 シンプソンの公式 3次の多項式に適用→驚…

逆像が像より自然な理由〜引き戻しと押し出し〜

今回は, 逆像の理解をモチベーションとして, 引き戻しと押し出しについて書きます. 細かいことを書くときりがないので, 曖昧な主張をしたり少し不具合の残る定義をしたりしますので, ご了承ください. (多様体などが例に出てきますが, 細かいところは関係ない…

Liouvilleの定理の証明

今回はついにLiouvilleの定理の証明をします。以前の結果を使ったり、少し面倒な補題が必要になるので、証明のアイデアがわかることを重視して書こうと思います。 の不定積分が書けないことの証明は、以下の記事を参考にしてください。 http://tetobourbaki.…

ライプニッツ則と合成関数の微分

ライプニッツ則と合成関数の微分の関係について、少し書いておきます。 一般の体 を考えます。この体が微分体であるとは、関数 があり、以下の2つの条件を満たすことを言います: (i) (加法的) すべての に対して が成り立つ。 (ii) (ライプニッツ則) すべて…

【書評】梅村浩『ガロア 偉大なる曖昧さの理論』

今回は、ガロアについて書かれたこの本を紹介します。実は、微分ガロア理論まで紹介したすごい本なのです。ガロア/偉大なる曖昧さの理論 (双書・大数学者の数学)作者: 梅村浩出版社/メーカー: 現代数学社発売日: 2011/11メディア: 単行本 クリック: 2回この…

微分環と双対数

微分環は、環の構造に加えて微分を考えているものでした。双対数を用いると、微分環は単なる環の議論に言い換えることができるということを知りました。けっこう感動したので、まとめておこうと思います。 双対数の定義 微分環と双対数 双対数の応用:微分を…

微分体の応用(Schanuel予想もあるよ)

今回は微分体の応用として、と が有理関数体 上で超越的であることを見ていきます。 実は、今回の内容はLiouvilleの定理の証明の準備になっています。 (というより、Liouvilleの定理の証明が大変なので、記事を分けることにした次第です。) おまけとして、と…

【書評】求積法のさきにあるもの

今回は磯崎洋『求積法の先にあるもの 微分方程式は解ける』を紹介します。 簡単に読めるが、なかなか難しいことまで書いてる良書です。求積法のさきにあるもの: 微分方程式は解ける作者: 磯崎洋出版社/メーカー: 数学書房発売日: 2015/03/15メディア: 単行本…

不定積分が初等関数で表せないものについて(Liouvilleの定理)

ご存知の方も多いように、やの不定積分は高校で習うような関数(初等関数)では書くことができません。 今回は、このことを証明するために使われるLiouvilleの定理とその応用を紹介します。 今回の内容では、Liouvilleの定理の証明や"初等関数で書けない"と…

初等関数で書けないとは、どういうことか

の不定積分は計算できない、 もっというと、初等関数では原始関数が書くことができないと言われます。 今回は"初等関数で書ける"ことの厳密な定義を述べます。 微分体の復習 "初等関数で書ける"の直感的な意味 "初等関数で書ける"ことの微分体による定式化 …

Σの公式の秘密

今回は、数列の単元のΣの公式について書きます。 Σの公式を覚えていますか 美しき超Σ公式 超Σ公式の解釈 場合の数の公式を思い出す。 おまけ Σの公式を覚えていますか 高校生や高校生だったみなさんの中には、やなどの和の公式、いわゆるΣの公式に悩まされた…

「正則関数」という用語を使うの止めたい

「正則関数」の何がおかしいか 複素関数論を勉強して少し経ってから、正則関数という用語がおかしい、もっと言うと誤訳であることに気がつきました。ついでに言うと、有理型関数というのもあまり良くない用語でしょう。これらについて、どこがおかしいかを述…

あたりまえだけど、とても大切なこと

タイトル あたりまえだけど、とても大切なこと 子どものためのルールブック 著者 ロン・クラーク 訳者 亀井よし子 出版社 草思社 ルール1 大人の質問には礼儀正しく答えよう ルール4 人の意見や考えを尊重しよう ルール15 宿題は必ず提出しよう などなど…

関数論の古くて新しい視点 アンリ・カルタン「複素関数論」

タイトル Elementary Theory of Analytic Functions of One or Several Complex Variables 著者 Henri Cartan 出版社 Dover 私が複素関数の面白さに目覚めた本 ブルバキのメンバーのアンリ・カルタンによる複素関数論の本です。 特徴としては、 形式ベキ級数…