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記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

『線形代数群の基礎』の書評+良書についての考察

書評です。今回は全部読めた訳ではないですが、使っていて非常に良かったので紹介します。

タイトル 線形代数群の基礎

著者 堀田良之

出版社 朝倉書店

 

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確実に日本語の線形代数群の定番になる本

僕は線形代数群を使う立場にいるのですが、非常に勉強しづらい。なぜかと言うと、線形代数群を勉強するためには、代数幾何を勉強する必要があるからです。そして、代数幾何もいろいろな立場があり、代数群のための代数幾何の本というのもほとんどないのです。

線形代数群と言えば、Borel, Springer, Humphreysの3人がそれぞれ書いた『Linear Algebraic Groups』が定番書でした。 ( みんな同じタイトル。) これらも良いのですが、代数幾何の説明が十分でない感じはあります。また、「写したんじゃないの?」と思われるほど同じ記述がある部分があるものの、微妙に違いがあって、つまり、それぞれ一長一短があるので、3冊をうまく組み合わせるとうまく勉強できるのですが、面倒です。残念ながらどれか一冊では厳しい感じなのですね。

日本語では、永田の『アーベル群・代数群』という本がありますが、ベストという感じではありません。古いし。志村五郎先生が書かれていましたが、教科書は新しい方がいいわけで、理論の書き方が変わる分野は特にそうでしょう。

 

そこで登場したのが本書です。

代数幾何に関しては、現代的な枠組みであるスキームと古典的な枠組みの両方を説明しているため、この本で勉強すれば現在の論文や昔の文献にスムーズにつながります。代数の知識は前提としているものの、必要な命題はこの著者の『可換環と体』を引用しており、ギャップを感じることなく読むことができます。『可換環と体』自体が良書なため(どうせ読むため)代数で困難を感じることはあまりないでしょう。

肝心の線形代数群ですが、上で述べた「Linear Algebraic Group」の3冊を下敷きにしているものの、元の本にあったギャップをうまく埋めてくれているので、非常に読み易い。一長一短あった3冊のいいところをとった本とも言えるでしょう。

4章まででJordan分解、Lie代数、商など線形代数群の基礎的な言葉が説明されており、5章、6章でBorel部分群、ルート系などの線形代数群の本格的な内容に入ります。7章、8章では、簡約群が扱われており、これが本書の目的であり特色でしょう。

線形代数群は体を何にとるかが重要なのですが、本書では代数閉体の場合を主に扱っています。僕が線形代数群を使う上では、この場合で十分でした。随所で一般的な体の場合についても言及しているので、一般的な場合を勉強する上でも非常に参考になると思います。

著者は教科書に定評がある堀田良之さん (名著の条件とは)

堀田先生といえば、『加群十話ー代数学入門』や『代数入門ー群と加群』など、名著が多く、教科書としても広く使われています。数学の教科書がたくさん出版される現在、定番となるには条件があるみたいです。

教科書は、絶対に知っておくべき知識が確実に身につくことが必要です。数学では、ある分野を勉強したということは、その分野の共通言語を身につけるということです。一昔前の本は、それを狙った本がたくさんありますが、それだけでは古典的な名著、例えば微積分学では、高木、小平、杉浦などの劣化にしかならないため、ほぼ存在価値がありません(安さ勝負になる。) 一方、最近は特徴のある(奇抜な)説明をする著者(数学者)が増えてきており、そのような方に執筆をお願いして書かれた教科書のシリーズもいくつかあります。しかし、奇抜であることに成功した本も、教科書として使うには癖がありすぎて定番にはならない、といった感じがあります。参考にする程度にはいい本は最近たくさんあるんですけどね。

そんな中で、新しく教科書を書いて定番になることを目指すには、共通言語が身につく上に、新しい視点がさりげなく入っていることが必要みたいです。もう少し細かく分析します。古い伝統となっている内容が削ぎ落とされていることはポイントが高いです。また、特色は定理や命題の主張ではなく、構成や具体例で出していくといいでしょう。定理や命題が変わっていると、定番にはなりにくいです。このようなことが出来ている著者として僕がすぐに思いつくのは、堀田先生と深谷先生です。大森英樹先生は独特な内容の文章を書かれることが多いのですが(もちろん良い意味で)、教科書としても、『一般力学系幾何学』が特色がありながらも素晴らしい内容になっていると思います。

ちなみに、構成で特色が出せた最も重要な例がブルバキでしょう。あそこまでやって定番になったのはすごい。厳密には、ブルバキの本自体は確かに現在の定番とはなっていませんが、  現在の定番書の多大なる影響を及ぼしているのです。

 

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