記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

【読書ログ】「複素領域における線形微分方程式」1章


渋谷泰隆「複素領域における線形微分方程式」を読んでいます.とりあえず一章を読んだので少しまとめます. (久しぶりにブログを書くので書き方を忘れた^^;)


参考にする方がいるかもしれないので, まず, この本の感想を書いておきます. まず, 第1章に関して言えば見た目ほど難しくないです. というのも, 定義を丁寧に書いたり証明のアイデアの説明に多くのページを割いており, 本質的に難しい部分(ギャップ)はほとんどありませんでした.

扱う内容が高度なため, それ以前の基本的なことは性質の紹介だけの部分がありました. それは仕方ないでしょう. 前から読むだけだったり, 前提知識がない場合は, モチベーションが分からない定義や定理がありますが, あとで説明していることが多いので, 最初はこの本を信じて根気よく読むことが必要です.

第2章以降はもっと高度な内容になるようですが, 読み切ることができればすごく勉強になりそうです. この本の難しさは前提知識が多いところだと思うので, 程よい参考文献が見つかれば, 最高の本になるのではないでしょうか.

さて, 1章の内容をまとめます.

まず, 第1章の目的は主に三つあり,

1 解析接続の構造とモノドロミーの構造が同値であることをみること

微分方程式から解析接続の構造(およびモノドロミーの構造)が定まること

3逆に「解析接続の構造が与えられたとき, それを定める微分方程式が存在する」ことを述べたGrauertの定理を紹介すること

です.

1節から3節は1変数複素関数論の復習です.慣れていなければ, 形式べき級数テイラー級数の区別が難しいかもしれません. この部分は説明不足な気がします.

4節から5節が解析接続の構造です. 第1章の難しい部分はいくつかありますが, 解析接続の構造から曲線に沿った接続行列を定義する部分でしょう. 位相空間における連結の性質を使った証明です. そういえばこの本は, 連結性を仮定しない部分があったり, 被覆に円板を使ったり, 説明なしで変わったことをしているところがいくつかあります. 自分なりの答えは考えましたが, 可算個の円板での被覆を考えるという部分に一般性があるのか気になってます.

6節はモノドロミーの構造です. 微分方程式では解析接続を使ってモノドロミーを直接定義しますが, この本では微分方程式すら仮定しない定義です.(省エネ)

7節で解析接続とモノドロミーの一対一の対応を証明します. これがこれまでの省エネ定義の正当性を与えます. モノドロミーから解析接続を定める部分の証明(特にwell-definedである部分)が大変です.

8節から10節で微分方程式が解析接続を定めることを示します. ここは意外と簡単. 正則関数を係数とする微分方程式を考えますが, 領域が単連結とは限らないため, 複素平面における有理型関数も考えることはできることに注意.

最後に11節でGrauertの定理を紹介します. 与えられた解析接続を定める微分方程式の存在を述べた定理ですが, 関数に関する制約が正則関数になっていることに注意が必要です. 3章以降の伏線になっています. 最後に2章で証明する形に, 少し一般化したGrauertの定理が書かれています.


さて, 最後に2章をぱらっとみた感じを書いておきます. 2章はGrauertの定理の証明ですが, そこでは多変数複素函数論が鍵になっているようです. ここを完全に理解することは, 複素関数論の知識が足りない今の僕には不可能なので, 証明のアイデアを学べたらなと思います. 参考として一松信の『多変数解析関数論』を使おうと思います. 2章では, この本の後半の内容がずいぶん必要となるようです.(ひえー.)

3章以降は様々なトピックがありますが, Grauertの定理で変換を有理型まで緩めるとどうなるか, といったことも関係するようですね.