記号の世界ゟ

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対数関数の超越性

対数関数  \log x は有理関数を係数に持つ多項式の零点にならない.つまり,対数関数は超越関数である.

超越関数であることの証明方法はいくつかあると思うが,微分代数の基本的な命題から簡単に証明できることが気がついたので紹介する.どこか議論がおかしければ誰か教えてもらえるとありがたいです.

(命題)
 K \subset L を定数体が同じ微分体の拡大とする.このとき, a \in L K 上代数的で  a' \in K ならば, a \in K である.

(証明) a の最小多項式で最高次の係数が  1 のものを

\qquad P(X) = X^n + c_{n-1} Y^{n-1} + \dots + c_0, \quad c_j \in K
とおく.

 n = 1 のとき, P(a) = 0 より  a = -c_0 \in L となるので明らか.

 n > 1 のとき, P(a) = 0 の式を微分すると

\qquad (na' + c_{n-1}') a^{n-1} + \dots + c_0' = 0
となる. a' \in K より,左辺は高々  n-1 次の  K 係数の  a多項式となる. P の最小性より,この多項式多項式として  0 でなければいけないから,特に  na' + c_{n-1}' = 0 となる.よって,定数体を  C とすると,
 \displaystyle
\qquad a' = -\frac{c_{n-1}' }{n} \\
\displaystyle \qquad a = - \frac{c_{n-1} }{n} + d, d \in C
となる.よって, a \in K となる. \square


対数関数  \log x微分 1/x \in \mathbb{C} (x) である.よって,この命題により  \log x \mathbb{C} (x) 上代数的ならば, \log x 自体が  \mathbb{C} (x) でなければならない.つまり,有理関数でなければならない.しかし,対数関数は明らかに有理関数ではない.例えば,対数関数は無限多価関数であるが,有理関数は必ず一価である.よって対数関数は超越関数である.


このように,微分代数の命題を使うと, \log x微分が有理関数になるという特殊な性質が,超越的であることに効いていることが分かる.


(参考文献)
Schidlovskii, "Transcendental Numbers"