記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

新入生に勧める数学書2018

ツイッターで大学新入生にオススメの数学書を、ハッシュタグ #新入生に勧める数学書2018 で募集しました。


皆さんのオススメの本を抜粋して紹介します。

参加してくださった皆様、ありがとうございました。
(ツイートの掲載は許可をとっています。了承していただいた皆さん、ありがとうございました。)

はじめに

こんな企画を始めたものの、知らない人が勧める本にすぐに飛びつくのではなく、著名な数学者が勧める本をまずは本屋で見て欲しいと思います。
それを知るには、ちょうど、毎年この時期に出る『数学ガイダンス2018』がオススメです。
数学者が勧める本の紹介や、数学の各分野の紹介、大学での勉強法などがまとめられています。
(とは言え、ツイッターで紹介してくださった多くの本は、この本でも紹介されています。)

あと、個人的な意見を少し。
大学で使う教科書には、4年やそれ以上の長い期間使い続けることができるものがあります。
いわゆる名著と呼ばれる本や大学で勧められる本はそういうものが多いです。
最初は、自分で理解できるように平易に書かれた簡単な本を買いがちですが、そういう本は半年もすれば必要なくなることも多いです。
なので、是非とも長年読み続けられてきた名著を、最初は理解できなくても、買っておいて折にふれてチャレンジして欲しいです。
これは難しい本を読めと言っているのではないです。
また、もちろん自分で理解できる本から始めることも大事ですし推奨しますが、分かりやすさという基準では捕らえられない数学書の価値も知って欲しいところです。

あと、大学の図書館を有効活用して欲しいですね。
本を買うときは、本屋や図書館でちゃんと自分で見てからにしましょう。

一般

高校数学と大学数学ではギャップを感じることが多いと思います。そのギャップを埋めてくれる本や、数学の面白さを伝える本を見ていきましょう。
数学ガール シリーズ


数学ガールで数学が好きになった人は多いようです。大学生でも読んだことがなければ是非とも読んで欲しいです。
たくさん本が出ていて何を買えばいいのか分からない場合は、以下のページを参考にしてください。

オイラーの贈り物

志学数学


この本は、本当にオススメです。
大学生に限らず、数学者や研究者に憧れている人や数学に興味がある人は是非とも読んでみてください。

数学の大統一に挑む


数学の最先端を知ることができる本はなかなかありません。
いろんな概念を出来るだけ易しく解説しているので、すべて読み通すのは難しいかもしれませんが、是非とも手にとって読んで欲しい本です。

微積

微積分は名著と呼ばれる和書が多いです。
以下の高木、小平、杉浦の三冊のうち気に入ったものを買っておいて損はしないと思います。

解析概論


「取り敢えず、高木貞治さんの解析概論を読んでおけば微積の授業で困る事は無くなるはずです!」
という意見もありました。
著者の高木貞治は近代日本数学の父とも呼ばれています。
昔から長年読まれ続けてきた本であり、一番有名な数学書だと思います。
実はそれほど難しいわけでもないですが、新しい本に比べると書き方の面で読みづらいかもしれません。

解析入門I II (杉浦光夫)



私が勉強したのもこの本でした。
難しいところがたくさんありますが、普通の本には書いていないけど大事なことがたくさん書いてあります。
数学の力をつけたい人や、授業では分からなかったことを調べるのにもオススメです。

解析入門I II小平邦彦


小平先生はフィールズ賞をとった数学者です。
丁寧に書かれていて、分かりやすさも重視されている本です。

上の三冊が有名ですが、難しい場合には以下の本を紹介している方がいました。
解析入門 (ラング)



この本自体は、私はちゃんと読んだことがありませんが、ラング先生はたくさんの本を書かれていて、私は"Algebra"をよく読みます。
数学を続けていけば、この本ではなくてもラング先生の本を読むことになるのではないでしょうか。

他にもたくさんの本が紹介されていました。
解析入門1-6 (松坂和夫)
https://twitter.com/Annihilated_Uni/status/971243338669215745

微分積分(黒田成俊)

対話 微分積分学(笠原晧司)


解析学入門(福井常孝/上村外茂男/入江昭二/宮寺功/前原昭二/境正一郎)

解析入門 (田島一郎)

イプシロン-デルタ (田島一郎)



私は読んだことがないのですが、この本は有名ですね。
イプシロンデルタ論法は最近授業で扱われないことも多いそうですが、早いうちに理解できると楽しいです。
(はじめは難しく感じるかもしれませんが、実は難しくないので、数学を勉強しているうちに絶対に理解できます。分からなくても落ち込む必要ないと思います。)

線形代数

線形代数は本当にたくさんの本があります。
基本的には授業で紹介される本を使うと良いと思いますが、それでは分からないと思った時には、評判のいい本や自分の気に入った本を使うと良いでしょう。
線形代数入門(斎藤正彦)



線形代数(佐武一郎)



線形代数(長谷川浩司

線形代数(三宅敏恒)

副読本的な本も紹介しておきます。
はじめてのリー群
はじめてのリー環


線形代数は本当にいろんな分野で役に立ちます。
リー群やリー環はその典型例で、これ自体が非常に大切な概念です。
これらの本は線形代数を復習しながら、その使い方も分かるように書かれています。

2次行列のすべて


今の高校生は高校で行列を学びませんが、この本は高校の行列で教えられていたことに加えて、大学の線形代数で勉強することを2次行列に限定して一通り勉強できるようになっています。

代数学(整数)

代数学は大学に入ったばかりでは授業がないですが、興味がある人が多いと思います。整数の本もここで紹介しておきます。

数論への招待

初等整数論講義

代数学(雪江 明彦)

みんな大好きガロアの本も紹介されていました。

ガロアと方程式

代数と数論の基礎
代数方程式とガロア理論

幾何

大学に入ったばかりでは幾何の授業があまりないため、それほど幾何の本は紹介されていませんでした。
しかし、小林昭七先生の以下の本を紹介する人は多かったです。

曲線と曲面の微分幾何


この本は具体例が豊富で非常に分かりやすいです。
抽象的な幾何でつまずいている人や幾何に興味がある人はこの本でトレーニングするといいと思います。

微分形式の幾何学


この本は私からもオススメします。
最初、幾何で困ったらこの本を読んでいました、この本以上に頼れる本はないです。
入学したばかりではピンとこないかも知れませんが、頭の片隅に置いておいて欲しいです。

集合と位相

数学科で勉強する集合や位相といった分野は、高校とのギャップが最も大きい分野だと思います。

集合・位相入門


位相と言えば真っ先にあがる本です。
私もこれで勉強しました。
分かりやすく書いているわけではないですが、丁寧に書かれていて、ゆっくり読めばちゃんと分かるようになっています。

集合と位相



この本は分かりやすいとすごく評判の本ですね。
誰にも勧められる本はこれだと思います。

トポロジー入門

この本も非常に分かりやすいと評判です。
授業や他の本で挫折した時には是非この本を手にとって欲しいです。

みなさんのアドバイス

本に限らずアドバイスを書いてくださった方もたくさんいましたので、まとめておきます。


その他

上で紹介した枠組みには入らないような本やちょっと変わった本の紹介もありました。いい本ばかりなのでまとめておきます。
最近、妹がグレブナー基底に興味を持ち始めたのだが。


カクヨムで連載中の小説の書籍化です。
少しふざけた本のように見えるかもしれませんが、数学の本として本当にいい本だと思います。(私も持っています。)
連載記事は以下で無料で見ることもできます。書籍版は書き下ろしの短編が入っています。
kakuyomu.jp

本質から理解する数学的手法


この本は知らなかったですが、目次を見たところ、まさに新入生にぴったりの本ですね。

数学文章作法 基礎編


数学ガールの著者による数学の文章の書き方の本です。
この本も非常にいいです。

30講シリーズ


このシリーズを読んで理解できたと言っている人を普段もよく見ます。
授業が分からなくなった時には、このシリーズの本を読むことをお勧めします。

マセマシリーズ


問題を解きながら重要な概念を理解していくことができます。
ちゃんとした教科書を買った上でこの本で訓練するといいと思います。

数理解析学概論


大学の数学で勉強する様々な分野がこれ一冊で勉強できます。
とは言え、この本の最大の特徴は解析学の説明です。
解析学微分方程式への応用は大学の数学でもなかなかたどり着けないのですが、現代数学で非常に重要な部分を占めています。
それを知るには最適な本だと思います。

数理論理学


この本は僕が数学を好きになったきっかけの本でもあってオススメしたいところです。
完全性定理や不完全性定理などは聞いたことがあるかもしれませんが、そのようなことも書いています。

非線形ダイナミクスとカオス


力学系の本の中で最も易しく書かれている本だと思います。
力学系自体も面白いですし、解析がどのように応用されるかを知っておくと、発展的な内容を勉強するモチベーションにもなると思います。

Lawvereの書籍
https://twitter.com/WatanabeYohei/status/972112043930140672
圏論を知っていると、いろんな分野のつながりが良くわかるようになります。
例をあまり知っていない状態で圏論だけを勉強してもなかなか分かるようにはなりませんが、他の数学と一緒に少しずつ勉強していくと良いと思います。
最近は入門書やネットで読める易しい解説も多く、勉強しやすいと思います。

カラー図解 数学事典


これも新入生にオススメの本です。
少し高価なので、合格祝いに買ってもらいましょう。

LaTeX2ε 美文書作成入門

LaTeXを使えば、数式が綺麗に書けます。
理系ならいつかこの本を買うことになると思います。

数学女子


数学科の雰囲気が分かる漫画です。