記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

指数関数の代数的独立性

『微分体の理論』を読んでいたときに,指数関数の代数的独立性が必要になった(と思う)が,証明が分からなかった.たまたま読んでいた本に証明がのっていたので,復習をかねてまとめておく. (定理) 複素数 が 上線形独立とする.つまり,整数の組 に対し…

三体問題を解く(正三角形解と共線解)

前回、二体問題はケプラー問題に帰着されることとケプラー問題は解けることを見ました. tetobourbaki.hatenablog.com三体問題は一般には解けませんが,解ける解として正三角形解と共線解(直線解と言われることが多い)が知られています.下の動画ではこれ…

二体問題を解く話(四元数の応用)

二体問題は解けて三体問題は解けないと言いますが,二体問題の解法の一つを紹介します.これは三体問題に関する次の記事の準備というのが最大のモチベーションです。せっかくなので以下の論文で紹介されている四元数を使った解法を説明します. Jan Vrbik, "…

解ける線形微分方程式の話

微分ガロア理論では初等関数が扱えます.その定義はわりとわかりやすいのですが,さらに微分ガロア理論的にはLiouville拡大の方が重要な関数のクラスを定めています。しかし,その定義は初見では分かりにくいため,その意味を解説します. Liouville拡大 解…

対数関数の超越性

対数関数 は有理関数を係数に持つ多項式の零点にならない.つまり,対数関数は超越関数である.超越関数であることの証明方法はいくつかあると思うが,微分代数の基本的な命題から簡単に証明できることが気がついたので紹介する.どこか議論がおかしければ誰…

一般化戸田方程式について

可積分な方程式のとして重要な戸田格子には様々な一般化があります.戸田格子の背後にある半単純リー代数の構造に着目し,戸田格子に類似する可積分な微分方程式を得る方法を紹介します.この視点に立てば,通常の戸田格子はA_n型の半単純リー代数に対応する…

可約な場合の超幾何方程式の解について

本記事では以下の定理を示す. (定理) とおく. の 1 つが奇数ならば は初等関数とその積分で書ける.これは方程式が可約のとき,方程式が解けることを意味する.特殊な場合として,可約な場合の超幾何方程式も解ける.もっと言えば,超幾何方程式に帰着さ…

なぜ素イデアルを点と見るのか

代数幾何について最近ちょっとしっくりきたのでまとめておきます.タイトルでは素イデアルを挙げていますが,そこに至るまでを詳しく書きます.いろんな説明の仕方があると思いますが,幅広く議論する気はありません.アファインの場合だけを考えますし層の…

単独高階微分方程式の連立一階微分方程式への変形について

単独高階線形微分方程式を一階の連立微分方程式に変形する方法は有名です.一方,逆に連立方程式を単独高階方程式に直せることが知られています.この事実は時々説明されることはあるものの証明が書かれていることはほとんどないです. そこで巡回ベクトルを…

新年の抱負2019

新年あけましておめでとうございます。 今更ですね。 ちょっとごちゃごちゃしてたので、新年の抱負をこのタイミングで書いておきます。 去年の抱負は「趣味を楽しむ余裕を持ちながら、やるべきことをやっていく」でした。けっこう達成できたのではないかと思…

理想的な物理理論としての電磁気学

この記事は以下の一連の記事の最終回ですが,今回の内容が目標だったので,できるだけこれまでの記事を読まなくても理解できるように説明していく. tetobourbaki.hatenablog.com tetobourbaki.hatenablog.com tetobourbaki.hatenablog.com tetobourbaki.hat…

理想的な物理理論としての電磁気学(4)

以下の記事の続きです. tetobourbaki.hatenablog.com一連の記事の目的としては,あとはゲージ変換やゲージ不変性について説明すれば終わりです.参考にしている牟田『電磁気学』では非相対論的な電子の場を使って議論をしているため,これと同じ説明をする…

理想的な物理理論としての電磁気学(3)

ラグランジュ密度を用いて微分方程式を出す方法とその利点をまとめていきます. 以下の記事の続きです. tetobourbaki.hatenablog.com今回はコッティンガム,グリーンウッドの『素粒子標準模型入門』を参考にしています. 連続系のラグランジュ形式 ローレン…

理想的な物理理論としての電磁気学(2)

今回は以下のブログの続きで、相対性理論に関連することをまとめる. tetobourbaki.hatenablog.com ローレンツ変換 テンソル ローレンツ共変性 共変形式のマクスウェル方程式 ローレンツ変換 物理学では,「座標が変わっても法則の形は変わらない」という信…

理想的な物理理論としての電磁気学(1)

物理学の様々な分野を勉強する上で,電磁気学は理論のお手本として提示されることが多い.つまり,成功した理論である電磁気学との類推で新しい理論の方針を決めるという場面が非常に多い.そのため,電磁気学のどこを見て成功している理論と呼んでいるのか…