記号の世界ゟ

このブログでは, 数学書などの書評を書きます。また、受験などの勉強法をまとめます。

読書していることについて

昔からけっこう本を読むのが好きだったのですが、約10年くらいでやっと「本で読んだ内容が身についている」という実感を安定して持てるようになってきました。*1
というか、そういう読み方がやっとわかってきたという感じです。


そんなわけで、本を読むうえで大事だと思っていることを備忘録として残します。
「本の読み方」なんて本もYouTube動画も山ほどあるので、それを伝えることやその完成版を作ることが目的ではありません。
自分の今の実感を表現したいだけです。


「いい読書」という観点では、自分は以下の4つを意識することが重要だと思っています。
 「目的を持つ」「本を選ぶ」「本を読む」「アウトプットする
これを具体的に書いていきます。最後に読書について思ってることを書きます。

目的を持つ

目的を持って本を読むことは一番大事だと思います。
特に、他の項目「本を選ぶ」「本を読む」「アウトプットする」すべてと関係するので。


とはいえ、目的をあまり持たずに本を読むこと自体が楽しかったりするんですよね。本好きな人は。
例えば、お目当ての本を探しに行った本屋で、初めて見た本が気になって買ってしまった場合、
そんなに中身も評判も分からない状態なわけで、つまり、そんなに目的がないわけです。
むしろ、自分の想像していないような内容に出会えたりすることを求めていたりしていて、明確に目的を持っていればできない読み方とも言えます。
こういうのも大切だと思います。


という感じで、目的を持たない読書もありだと思います。
ただ、目的を持って読んでるはずの読書で目的を忘れる、ということをやってしまうのは問題です。
「眠い目をこすりながら読み進めていて本当に役に立つ?」「この本は当初の目的のために役に立たないことに気が付き始めてるのにこれ以上読み進める意味ある?」
など、目的からするともはや読んでも意味がないのに本を読もうとしてしまうことは、まあまあの頻度であるわけです。(いや、めちゃくちゃある。)
こういうのを避けるためにも「この本を読む目的は何だったか」は、できれば常に頭の片隅に置いておきたいものです。

本を選ぶ

本のいい選び方

本の紹介が信頼できる人を見つける

いい本を、自分に合うような本を紹介してくれる人は必ずいます。
ブロガーなりYouTuberなりTwitterなりたくさんいます。そういう人を見つけられたら最高です。
読んで良かった本の引用文献が次に読むべき本であることも多いですし、そういう本の著者はTwitterでいろんな本を紹介していることも多いです。

本屋で推されている本を読む

本屋さんは本を商売にしてるのでいい本の目利きがすばらしいです。当然ですが。
大型書店ではジャンルごとに担当がいたりするので、推されてる本は注目する価値があるでしょう。
信頼できる本屋を見つけるのが大事だったりします。
自分は大学生協のアート系・クリエイト系のコーナーのフェアはかなり信頼してました。

好みに合ったライターの本を読む

いい本だと思ったときは、内容云々以上に著者の書き方や興味自体が自分にあっているのかもしれません。
その著者の他の書籍も興味があるような内容なら読んでみましょう。興味がないような分野だとしてもその人の書き方なら興味が持てるかもしれません。
本ごとにこれをやるというよりは、著者に注目していくうちに、本が出たら必ずチェックする作家が増えていくようになると思います。
そういう作家(新しい本が出るたびに読んで後悔しない作家)が増えることはいいことだと思います。

名著を読む

名著と呼ばれている本は読んで損はないです。
「こんな生きる上で前提みたいな重要な知識なんで早く教えてくれなかったんだ」ってほどの本もあります。
逆に、大したこと書いてないと感じたとしても、それが名著である理由を考えたり、「名著リスト」の一つを消化してしまったと考えればそんなに損ではないです。

読んで役に立たないと感じた本は読む必要がないと基本的には思いますが、名著と呼ばれるものに関しては"はずれ"を引いたとしてもトータルで絶対に損はしないと経験上断言できます。*2

本の悪い選び方

選び方は悪い方法を上げる方が簡単かもしれません。

いきなり原著を読む

何か有名な理論なり考え方なりの原著を読むのは「原著を読む」ことが目的な場合を除いてほぼ役に立たないケースが多いです。
例えば、原著と呼ばれるほどの本はそれまでの考え方をひっくり返したからこそ価値があるケースがほとんどなので、その時代・分野の前提を理解してないと意味がないです。
「そのときの知識では整理できなくて今ならもっとよくわかってることが書いてない」とか「最先端なので専門家ですら難しい」とか読むべきでないパターンはいくらでもあります。

もちろん原著を読む価値があるときもありますし、少なくとも買って損はないパターンも多いです。
特定のテーマの本をいくつか読んでいて、頻繁に参照されるような本なら原著を手元に置いておいた方がいいでしょう。
また、原著が難解すぎて変に解説書とかを読むよりも直接読んだ方がいいパターンもあると思います。(誤読してしまったとしても!)
(ここでジュディス・バトラーが念頭にある。)
とは言え、まあ明確な理由がない限り原著をいきなり読み始めていいことはほとんどないと思います。

ジャンルあるいはテーマが興味にあっているという理由だけで読む

興味がある分野だとしても適当に手に取った本を読むくらいなら定評のある本を読む方が絶対にいいです。
この方法をとってしまって読んで失敗したとしても、よっぽどでない限りなんだかんだちょっとは役に立った気になるのがです。
読書が好きな人は、読む必要もないし読む価値もなかったはずの本でも、読み切ってしまうとそんなに後悔しないんですよね。不思議ですよね。まあ本が好きだからそうなるんですが。

こうならないようにせめて途中で読むのを止める判断をする、これができるようになることをオススメします。

本を読む

アナログとデジタルを使い分ける

自分は紙の本ばかり買っていましたが、デジタルも使い始めました。
紙の本は場所をとってしまうことが、デジタルを使い始めた一番の理由です。
アナログデジタルどちらにも一長一短あるのですが、デジタルはスマホがあればいつでも読めるのが自分の中ではかなりの利点です。
興味のある本が増えて全然減らないのがかなりストレスだったのですが、デジタルで本をコンスタントに読む習慣が付くと、
なぜか自然にアナログの本も消化できるようになってます。いい循環です。

本を読む習慣をつける

本は読みましょう。
本好きの一番の悩みはこれでしょう?
本は読みましょう。


絵は描かないとうまくならないっていうじゃないですか?
本は読まないと積読が減らないのもだいたい同じですよ?


本は読みましょう。


まあ、そうは言っても読めないということに本気で悩んでいるなら、本を読むための本はいっぱい出てるのでそれを本気で読んで本気で実践しましょう。
あるいは、『習慣の力』のような本にかかれていることを応用して、本を読む習慣をつけるのに使いましょう。

自分の持っている問題(テーマ)を解決するような本を読む

自分がいま生きている上でリアルに興味関心を持っていること、心でもやもやしていること、知りたい・理解したいと思っている本を読みましょう。
そういうものはぴったりはまれば直接役に立ちますし、本の主張が納得できなかったとしてもそれが心に残ります。
読んでも役に立ったと思える本に出会うのは難しいですが、このレベルで深く興味がある内容であれば、内容が期待とはずれても自分の心に残りやすいです。


また、期待とはずれた内容だとしても、だからこそ自分の興味の対象をこれまでと違う見方を教えてくれます。
例えば、自分は今「フェミニズム」に興味があって『家庭の誕生』という本を読んだのですが、この本はむしろ従来のフェミニズムの観点で語られてきた「家庭」を
意識的に違う観点で書き進めることが目的の本だったので、「フェミニズム」の側面では満足できなかったわけです。
ですが、「フェミニズム」に拘ってると気が付かないものが得られるわけで、この本に関しては日本人の「家庭」の捉え方の変遷が分かってかなり勉強になりました。*3
もっと言うと、「コミュニティ」も今の興味の一つで、そっちへの学びもあってよかったです。

内容の近い本を連続して読む

理解が深まるので、内容が近い本を続けて読むのはオススメです。
よくあるパターンは、入門書を読んで、そこに書いてある発展的な本を読むというものでしょうか。
発展的な本の方で躓いたときに入門書の方の書き方を見ると、理解が進んだり逆に矛盾を見つけてしまい問いが深まったりして、どちらにせよ学びは深まります。


この方法の裏目としては、同じことばかり読むことになるので飽きる可能性があることです。
自分が本当に興味を持っている内容や、難度に明確に差があるものを読むのが一つの手です。
場合によっては、2冊目が思っていたのと全然内容が違うという場合もあるのでそういう場合は撤退しましょう。
ジャンルで本を選ぶとよくあることなのです。

全部読む必要はない

本は最後まで読み切る必要はないです。
これにこだわると本が溜まっていく一方になります。
期待と違うなって思った本には見切りをつけることは大事です。
また、最初は理解できた本も途中から全然分からなくなってきた場合、一旦中断するのも大事です。

何か目的を持って本を読むなら、読んだページ数ではなく、身についたもののみを考えましょう。途中だったり読み飛ばしたりしても目的が達成できてたら十分なのです。


近いことですが、読めないと思っている本があれば売った方がいいです。読める本に集中しましょう。後で読みたくなったらちょっと後悔しますがそのときに買えばいいです。
電子書籍なら買い直しの損はないので、その点でもオススメです。

アウトプットする

アウトプットはマストです。


アウトプットはマストです。


ただしアウトプットという言葉をかなり広い意味で使っています。

本を読んだからには何かに使えないと意味がないのですが、後で思い返すと読んで役に立ったと思える・覚えている本って自分はかなり少ない(少なかった)です。
なので、こうならないようにアウトプットしましょう。

以下がオススメのアウトプット法です。

人に話す

読んで気が付いたこと思っていることを人に話してみましょう。
相手からの問いに答えられなくて読みの浅さに気が付いたり、理解が不十分な部分に気が付いたり、そもそも何も思い出せなかったりします。
そうすると確認したいポイントが分かるので簡単に読み直すだけでしっかり身に付きます。

人に話すのは本当に役に立つので、一緒に本を読んだり、むしろ誰かが読んだ本の内容を自分が聞く、みたいな関係が築けたら理想ですね。
Twitterとかで交流がある人で、自分が読んだ本の話を誰かに聞いてもらいたい場合は僕に言ってもらえば喜んで聞きます。気軽にどうぞ~。(これ、わりと本気のメッセージです。)

ブログに書く・動画にする

「人に話す」と近いですが、「伝えること」ではなく「人に伝える形式でアウトプットする」こと自体に価値があると思います。
「ブログに書くのは忘れるため」というのは自分のモットーなのですが、この話は長くなるので別の機会で。

せっかくブログなりなんなりで発信するなら、いいフィードバックがもらえるような方法をとるのがオススメです。
例えばTwitterなら問いや疑問を書くとフィードバックがもらいやすかったりします。*4

内容の近い本を連続して読む

(どこかで見た項目な気が。。。)
内容の近い本を読んだときに、前の本の主張と比較したり片方でしか書いてない内容をもう片方に結び付けたり、二冊を矛盾なく自分の中で落とし込む作業をすれば、それは自然とアウトプットすることになります。
個人的にはこういう読みはかなり重要だと思ってますし、アウトプットとして認識するといいと思っています。

メモを取る

メモを取るのは学びのいい方法として取り上げられがちだと思いますが、そんなにいい方法ではないと思ってます。


ただ、「いい本だったけど、身についた気がしない」「要点が分からなくなってきた」みたいな時に、ポイントを書き下してロジックの構造を整理したりするには役に立ちます。

自分の場合、いい本だけどけっこう長い本を読み終わった後、目次で全体像を見直しつつ、本をスキミングして、見るだけで内容が思い出せるフレーズを書き写しておくってのをやったりします。
時間がかからないわりに2回目を読む程度の効果がありますし、ノートを見て復習できますし。

この方法は読みがうまくいかなかったときの最終手段、あるいは、絶対に理解したい本を身につけるための方法だと思ってるので、できるならもっと簡単にできて効果も高いべつの方法をとりたいです。

最近の自分と読書について

最近自分が熱心に本を読んでるのは、専門性は尊重すべきだし大事だと感じるようになったからです。
逆に言えば、そうなってないことに失望しているからです。自他ともに。


一つは、自分のことで、トランスジェンダーについてニュートラルに捉えていると思っていたことが、典型的な偏見であることを本を読んで初めて理解してかなり反省したからです。
「差別についてごちゃごちゃいうせいで差別がより深まるんだ」「知らなければ差別は起こらない」なんていう人がいて*5
それは違うでしょって思っていたのに関わらず、知識がないことから典型的なステレオタイプな考えをニュートラルな考えだと、偏見がないとすら思い込んでたわけです。
これでけっこうへこんで、ちゃんと勉強して考えを持つようにしようと思うようになりました。*6


もう一つはSNSで、思い込みや思いつきだけでの論争・水掛け論*7に辟易してることです。
これに関しては今に始まったことではないし、時代性の部分もあるので仕方がないと思っている側面もあるのですが、自分は片足突っ込まないようにしたいです。


そういったことを自分もいつの間にかやってしまう、そういう時代なので、それを抑えるためにどうしてそうなるのかを考えています。


SNSで不毛な論争になりがちな原因として以下があると思ってます。

  • 自分の思いつき、ロジックだけで結論を出す(自分の知識・興味範囲でしか考えてないので話が逸れがち。問題が合ってても考えの精度が悪い。)
  • ネットで調べて出てきた自分の論調に合ったものを議論に使う
  • そのトピックに関する基本的な考えに矛盾することをいう(場合によっては基本を理解した上でそれを乗り越えることを主張している可能性があるのでよけい議論しづらい。ただ、そもそもその基本を知らないケースがほとんど。)


以上は全部そのトピックについて勉強していれば乗り越えられる、しかも、わりと初歩的なところだったりするので、少し勉強すれば乗り越えられるなと思って、本をたくさん読んでいます。


そんなわけで、最近本を読んでるわけです。
興味あることとして政治的なことばかり上げた気がしますが、自分の興味の半分以上はイラストとか脚本とか映画とか数学とかエンジニアリングなので、そういう本も読んでます。


久しぶりにはてなブログに文章を書きましたが、文章書くの難しいですね。


最後に、最近よく参考にしてるOhama Ruriさんの動画が今回の内容にもぴったりなので、引用して終わります。
www.youtube.com

*1:本を読むのが好きになったのは『ゲーム的リアリズムの誕生』を受験期に読んだのがきっかけ。本屋が好きになったのは多分中高生のときにBOOKOFFで漫画の立ち読みしまくって、参考書とかもついでに見たりしたから。とけっこう自分の中では明確で、BOOKOFFには変な習慣付けさせられたなぁと思っていたのですが、今の時代を考えるとけっこうかけがえのないものだったのかもなとも思っています。

*2:みたいなことを書いていると、今読んでる本よりも名著レベルではもっと名著な本はもっとあるし、そういうの読むべきなのかなという気分になってくる。

*3:個人的には、外国の事情がもっと知りたかったし、この本の目的からしても1章そういう章があった方がより分かりやすくなったと思ってる。

*4:本の感想ではやらないと思いますしそもそも発信すべきことではないですが、対立を助長するような書き方をしたり、もっと悪い場合特定のグループ・個人をけなすようなことを書くとネガティブなフィードバックが返ってくるのがTwitterなので絶対にやらないでくださいね。まあそういう投稿はよく見るし、実際やる人は多いんですよね。

*5:部落問題になるとめっちゃよく聞きますね。この主張。

*6:どういうステレオタイプを持っていたかは書かないですが、表現すること自体が偏見を再生産したり、当事者の問題と関係ないものを押し付けるようなタイプのものです。後者に関しては詭弁の一つとして名前が付いていたはずだけど名前が思い出せない。

*7:人格攻撃とかもありますが、それは今回の話とは別。議論をしてるつもりで議論になってないようなものを念頭に置いてます。